病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

【メタ解析】フロセミドは持続投与したほうが良いですか?

2019.2.4修正加筆

 

フロセミドの持続投与と間欠投与を比較したメタ解析を読んでみる。

 

参考文献:Continuous Infusion versus Intermittent Bolus Injection of Furosemide in Critically Ill Patients : A Systematic Review and Meta-analysis

PMID:29454528

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研究デザイン:メタ解析

 

【論文の内容】

P:重症の肺水腫または末梢浮腫患者(16歳未満は除く)

I:フロセミド持続投与

C:フロセミド間欠投与

O:全死亡、入院期間 

 

※副次評価項目:最初の24時間の尿量、治療期間中の血清クレアチニン変化

 

・Primary Outcomeは明確になっているか   →  明確である

・真のアウトカムかどうか            →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

●評価者バイアス

Titles and abstracts were in dependently screened against eligibility criteria by 2authors(A.L.andA.V.).

The same 2 reviewers in dependently screened fulltexts of qualifying papers. Any disagreements at any stage were resolved bythe third reviewer(K.N.).

→2人で審査、意見の相違は3人目のレビュアー。

 

●出版バイアス

Ovid, MEDLINE,EMBASE,PubMed,and the Cochrane Database of Systematic Reviews were searched from their inception until June2017.

Publications not written in the English language were excluded.

The bibliographies of included papers and relevant systematic reviews were hand-searched for additional papers.

Experts and authors of papers identified in the search strategy

were contacted for additional data or missing data.

→Ovid MEDLINE EMBASE PubMed Cochraneから。2017年6月まで。

 英語のみ。追加データ、不足データは問合せ。 

 

 

●元論文バイアス

RCT、ケースコントロール研究、観察研究

コクランのバイアス評価ツール、Newcastle-Ottawa Scaleにてバイアスの評価がされてる。

Funnel plotsは使用されていない

 

●異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

 

【対象study】

f:id:pharmapon:20190202231828p:plain

以下加筆

RCTに関して対象患者群を見ると、

・心臓外科手術の患者

ICUまたはCCU入室中の肺水腫or体液過剰患者

・心原性肺水腫患者

・肺水腫または体液過剰でPaO2/FIO2 300未満

ICU入室中の体液過剰患者

・急性心不全患者

心不全、腎障害患者

 

【結果】

●全死亡

f:id:pharmapon:20190202231844p:plain

 

 ●入院期間

f:id:pharmapon:20190202231854p:plain

 

●24時間尿量

f:id:pharmapon:20190202231904p:plain

 

クレアチニン変化

f:id:pharmapon:20190202231917p:plain

2018 Oct;32(5):2303-2310.より引用


【まとめ・感想】

 尿量は持続投与が多いが、入院期間は間欠投与のが短く全死亡は変わらないという結果。全死亡は変わらないものの入院期間が短いほうが患者にとってのメリットは大きそう。尿量は代用アウトカム。

解析対象の試験も症例数が少なかったり単施設RCTだったりとそれほど信頼性が高そうなものではないように思うが、DOSE trial(PMID:21366472)や、他のメタアナリシス(PMID:28940440)などの結果を見てもおおむね一致した結果が得られていそう。

特に持続投与を支持する結果ではない印象。

 

以下加筆

D先生にご指摘いただき対象の違う研究が散見されるとのこと。

appendixが参照できないためどのような基準で選択されているのか詳細は不明だが、対象患者をもう少しそろえるとまた違った結果になる可能性があるのか。

ただ、PMID28940440では心不全患者のみを対象としており、そちらでも特に持続投与が支持される結果ではないように思われる。

このメタ解析のように持続のが尿量が得られることは実臨床でも経験するが、尿量upが予後改善には必ずしも結び付かないことはこのメタ解析からわかることの1つかも。

 

【RCT】PCI1年経過後の心房細動患者は抗凝固薬単剤でもよいですか?【OAC-ALONE】

ステント留置1年経過後で心房細動を合併している患者では現在抗血小板薬1剤+抗凝固薬で治療されていることが多いように感じるが、ESCやAHAでは1年経過後抗凝固単剤を推奨するような記載もあり、出血のリスクを考えればなるべく抗血栓薬の併用は避けたいところだと思われる。

 

An Open-Label Randomized Trial Comparing Oral Anticoagulation with and without Single Antiplatelet Therapy in Patients with Atrial Fibrillation and Stable Coronary Artery Disease Beyond One Year after Coronary Stent Implantation: The OAC-ALONE Study

PMID:30586700

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 非劣性試験 非劣性マージン1.5

論文の内容

P:20歳以上の心筋梗塞ステント留置後1年経過+心房細動合併

I:抗血小板薬+OAC

C:OAC(ワーファリンorDOAC)

O:全死亡、心筋梗塞脳卒中または全身性塞栓症の複合

 

※ワーファリンの目標INR70歳未満では2.0-3.0、70歳以上では 1.6-2.6。

 

除外基準:

12ヶ月以内のPCI歴、抗凝固薬の中止が予定されている、ステント血栓症の既往、冠血行再建予定患者、外科手術(心血管・非心血管)予定患者、12ヶ月以上の生命予後が見込めない患者

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカムといえる

・適切なランダム化がされているか   →されている?

・盲検化されているか         →オープンラベル     

・解析方法は              →mITT解析

・追跡率               →98.6%

・追跡期間                →2.5年(中央値)

・患者背景             →下記図を参照

・サンプルサイズ          →2000人

・スポンサー                →第一三共

・非劣性マージン          →1.5

 

【患者背景】

f:id:pharmapon:20190111200211p:plain

f:id:pharmapon:20190111200231p:plain

 

【結果】

f:id:pharmapon:20190111200240p:plain

f:id:pharmapon:20190111200257p:plain

 

【サブ解析・主要評価項目】

f:id:pharmapon:20190111200309p:plain

【サブ解析・副次評価項目】

f:id:pharmapon:20190111200328p:plain

 

【まとめ・感想】

主要評価項目は非劣性を示せず。出血を含めると非劣性。

症例数が圧倒的に足りないためなんともいえないが、OAC単独ではSAPT+OACに比べ血栓イベントは増える傾向だが出血は少ない傾向か。

AFIRE試験では併用群にて出血イベントが多く中止になったとのことで、OLTAT registry(PMID29776575)なども合わせて考えるとAF合併でPCI後1年経過した後は充分にOAC単剤でもいける可能性があると思われる。

血栓薬の併用はなるべく少なく、なるべく短期間にする流れは間違いなくあると思うので今後も新たなデータなどしっかり追っていきたいところ。

 

 

【RCT】タケキャブの効果はどうですか?【院内抄読会】

今年最後の薬剤部抄読会を行いました。

 

【仮想シナリオ】

あなたはとある病院の薬剤師さんです。

年末も近づき、木々は白く雪化粧をするようになりました。

 

寒さが厳しくなってきたある日、あなたは病棟で仕事をしているとDrから質問をうけました。

 

医師「薬剤師さん。ちょっと教えてほしいんだけど・・・タケキャブって実際今までのPPIと比べてどうなの?メーカーさんはいいことしか言わないからさ。今までのPPIより効果発現が早くて作用も強いですよって話はよく耳にするんだけど・・・」

 

タケキャブは既存のPPIより良い。と聞いていたあなたですが、自分でしっかり調べたことはありませんでした。

Drに少し時間をもらい、臨床試験の文献を読んでみることにしました。

 

参考文献:Randomised clinical trial: efficacy and safety of vonoprazan vs.lansoprazole in patients with gastric or duodenal ulcers – results from two phase 3, non-inferiority randomised controlled trials

PMID:27891632

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)非劣性試験(非劣性マージン:胃潰瘍8%、十二指腸潰瘍6%)

論文の内容

P:20歳以上の内視鏡的に確認された胃潰瘍または十二指腸潰瘍患者

I:vonoprazan20mg   6or8週(胃潰瘍8週 十二指腸潰瘍6週)

C:lansoprazole30mg  6or8週(胃潰瘍8週 十二指腸潰瘍6週)

O:内視鏡的な胃潰瘍または十二指腸潰瘍の治癒

 

除外基準:84日以内のvonoprazan投与歴、潰瘍治療を7日以内に受けた患者、過去5年以内の悪性腫瘍患者、ゾリンジャーエリソン症候群、肝機能異常 等

 

副次評価項目:2週、4週時点の治癒割合、自覚症状、

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカムとしてよいだろう

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →されている

・解析方法は              →FAS PPS SAS

・追跡率               →おおむね両群95%程度

・追跡期間                →6-8週

・サンプルサイズ          →胃潰瘍215人、十二指腸潰瘍175人  

・スポンサー                →武田薬品

 

 【患者背景】

 f:id:pharmapon:20181215080337p:plain

 

【結果】

f:id:pharmapon:20181215080534p:plain

【サブ解析】

f:id:pharmapon:20181215080639p:plain

 

【自覚症状】

f:id:pharmapon:20181215080550p:plain

 

【副作用】

f:id:pharmapon:20181215080602p:plain

  

【まとめ・感想】

胃潰瘍は非劣性。十二指腸潰瘍についてはボノプラザンはランソプラゾールに対して非劣性を証明できなかった。

一般的にボノプラザンはCYPの影響を受けない、効果発現が早い、胃酸分泌抑制効果が協力等で宣伝されていることが多いと思われるが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療という点においてはCYP遺伝子多型がある患者においても(Table3)ランソプラゾールで十分治癒できると思われる。

ただ、胃潰瘍治療に関しては自覚症状改善の割合はボノプラザンのがよさそうにも見受けられるし、PMID12656699ではランソプラゾールはCYP2C19の遺伝子多型によって効果が変わることが示唆されるデータもある。ピロリ菌の除菌についてはボノプラザン使用のが優れていることが他の文献からは示されており、NSAID併用時の潰瘍予防(PMID29196436)やGERD(PMID26559637)などの結果も確認しながらしっかりと適応、適した症例を見極めて使用していくことが必要だろう。

コストや未知の副作用なども考えれば、現状わかっているデータからは既存PPIから全例ボノプラザンに切り替えるほどのインパクトはないのではないか。

 

【参加者の感想】

・1stで積極的に使用するような成績ではなさそうですね。

・そもそも胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対するランソプラゾールの効果もどれくらいなのかあいまいだった。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍にはランソプラゾールで十分そうですね。

・とりあえずピロリ菌除菌が主な戦場ですか?

・自覚症状が強そうな症例では選択肢になるのかも?

  

 

心房細動に対するアブレーションについて

最近いろいろあって全く文献が読めず更新できていないので11月9-11日に参加したアブレーション関連大会で発表した件について記事にしてみる。

 

【アブレーション周術期の鎮静・鎮痛管理について】

アブレーション(肺静脈隔離術)周術期の鎮静・鎮痛管理においては特に確立された方法はなく、各施設で異なる薬剤が使用されている。

自分の知る限りでは

プロポフォール、プレセデックス、フェンタニル、レペタン、ソセゴン、イソゾールなどから2種、3種を選択して使用することが多く、プレセデックス+プロポフォールもしくはプレセデックス+フェンタニルあたりが多いように感じる。

 

当院ではもともとプロポフォール+プレセデックス+イソゾールで行っていたが、高BMI患者やSASのある患者で難渋することが多かったためレペタン+プレセデックス+イソゾールへ変更した。

レペタン群ではおおむねプロポフォール群にくらべ主治医の感触もよく、鎮静深度なども良好な値が得られていたが術後の嘔吐が多く、プリンぺランの予防投与も効果が薄かった。

その後フェンタニル+プレセデックス+イソゾールでの管理へ変更したところ術後の嘔吐は少なくなり、主治医の感触もレペタン使用時に比べて良好である。

 

以下当院での具体的な投与方法について紹介する。

 

イソゾール2ml程度をフラッシュし、フェンタニル10A+生食30mlとプレセデックス200ug/50mlをそれぞれ3-10ml/hr(主治医判断により患者の体格によって決定)の速度で開始(術中の鎮静具合をみて適時調節)。

体動時にはイソゾール2ml程度を追加もしくはフェンタニル早送り。

焼灼開始時にはフェンタニル早送り

 

【アブレーションと心不全、抗不整脈薬、抗凝固薬について】

CASTLE AF、CABANAtrial、KPAFregistry、J-CARAFなど、近年アブレーションによる心不全患者の予後改善データなどが蓄積してきて、適応となるならば積極的にアブレーションをすることでのメリットが大きいのでは。と言われてきた。

アブレーションによって抗凝固薬や抗不整脈薬も中止できる可能性があり患者のQOLに対してもメリットは少なくない。

最近ではアブレーションにより洞調律を維持できることで腎機能維持にもつながることが示唆されるようなデータもある。

種々の文献からはアブレーションによっておおよそ5年で6割ほどの患者は抗凝固療法を中止できており出血のリスクが下がることは大きなメリットである。

周術期にOACを継続するかどうかについてはワーファリンではCOMPAREstudyにて継続が望ましいことが示されていたが、近年DOACでもデータが集まりつつある。

プラザキサのRE-CIRCUIT試験では内服継続が望ましいことが示されているし、VENTURE-AF試験、AXAFA-AFNET5試験でもそれぞれイグザレルトとエリキュースで継続が望ましいことが示唆されている。

しかしJACRE-R registryではイグザレルトにおいてワンスキップ法で問題ないことも示唆されている。

これらの試験結果を踏まえたESCのExpert consensusではワーファリン、プラザキサは内服継続がクラスⅠ、その他のDOACでは継続下がクラスⅡa、ワンスキップ法もクラスⅡaとすべてのDOACで継続がクラスⅠではないことに注意が必要である。

 

当院ではワーファリン以外はワンスキップ法にて周術期のDOAC休薬を管理しているが今まで脳梗塞を起こした患者はいない。継続下で、もし心タンポナーデなどの合併症が起こった場合ワンスキップ法に比べて重篤となることが予想される。

継続下でのデータが蓄積されてきている現状を踏まえ、主治医と今後のDOAC周術期の休薬をどうするか協議していくべきかと考える。

Xa阻害剤の中和剤が発売されたら継続でどうかと協議してみてもよいかと思っている。

  

アブレーション術後3ヵ月はbranking periodと言われ、再発リスクが高いため抗不整脈薬の使用が推奨される。

使用する薬剤はⅠ群の抗不整脈薬が多く、高リスク患者ではベプリコールを使用することが多い。

アミオダロンの有効性を示す報告はAMIO-CAT試験があるが、ベプリコールの有効性を示す報告も存在する。(PMID:26654806)

ただ、ベプリコール使用によってQTが延長し、増量するとその傾向は顕著である。中にはベプリコールによってTdpが誘発された症例もあったため、ベプリコール使用でも洞調律維持が困難でQTが延長が有意な場合アミオダロンを推奨する選択あるだろう。

 

 

 

【RCT】低用量アスピリン使用時のボノプラザン(タケキャブ)の効果はどうですか?

【背景】

最近やっとボノプラザンが採用となり、かなりの量が使用されるようになっている。

なかにはPPIをすべて切り替えているDrもいるので復習。

 

参考文献:Vonoprazan prevents low-dose aspirin-associated ulcer recurrence: randomised phase 3 study.

PMID:29196436

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=29196436

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)非劣性試験 非劣性マージン8.7%

論文の内容

P:消化性潰瘍既往で、低用量アスピリン継続が必要な患者(621人)

I:ボノプラザン10㎎

I:ボノプラザン20㎎

C:ランソプラゾール15㎎

O:消化性潰瘍の再発(24週)

 

※除外基準:

アスピリン喘息の既往

胃酸分泌に影響を与える手術の予定または既往

Zollinger-Ellison症候群または他の胃酸過剰分泌障害

腎障害、肝障害、5年以内の悪性腫瘍既往

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか       →真のアウトカムでよさそう

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →二重盲検されている      

・解析方法は              →FAS解析

・追跡率               →92%くらい

・追跡期間               →24週

・患者背景             →下記図を参照   

  

【患者背景】f:id:pharmapon:20181102153651p:plain

2018 Jun;67(6):1033-1041.より引用

 

【結果】

 24週

ランソプラゾール15㎎

ボノプラザン10㎎

ボノプラザン20㎎

消化性潰瘍再発率

2.8%

0.5%

1.5%

胃・十二指腸の出血

2.9%

0%

0%

重篤な副作用

1.4%

2%

2%

ランソプラゾール ボノプラザン10㎎(95% CI −4.743 to 0.124)

ランソプラゾール ボノプラザン20㎎( 95% CI −4.095 to 1.523)

 

f:id:pharmapon:20181102153715p:plain

2018 Jun;67(6):1033-1041.より引用

 

 【有害事象】f:id:pharmapon:20181102153732p:plain

2018 Jun;67(6):1033-1041.より引用

 

【まとめ・感想】

 24週のフォローではボノプラザンでランソプラゾールより再発が少ない傾向はあるもののランソプラゾールと非劣性。

その後の2年間のフォローではボノプラザンのがよさそうな結果。

確かにピロリ菌除菌時はボノプラザンはよさそうな印象だが、他の臨床試験の(PMID:27891632)結果などをみても既存PPIに対して圧倒的な結果などは出せていないし、個人的には全例既存PPIから切り替えるほどではない気がする。

コストや未知の副作用を考えると既存PPI使用下でも再発があった場合に考慮するくらいかなぁという印象。

ただ、たまにPPIからボノプラザンに変えると胸焼け症状がかなり良くなった!という患者さんも経験する。

 

感染症プラチナマニュアル 2018
by カエレバ

【RCT】クレメジンは腎機能維持に効果がありますか?【EPPIC trial】

【背景】

たまたまクレメジンをどのように飲むのがよいか。と少し調剤室で話題になったので飲み方は置いといて有効性についての論文を読んでみる。

 

参考文献:Randomized Placebo-Controlled EPPIC Trials of AST-120 in CKD.

PMID:22288014

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:SCr 男性:2.0~5.0mg/dl 女性:1.5~5.0mg/dlの中等度~重度の成人CKD患者2035人

E:標準治療+吸着炭(AST120)9g/日

C:標準治療+プラセボ

O:透析開始、腎移植、SCr倍増の複合

 

※除外基準:免疫抑制、腎移植、吸収不良、高血圧、閉塞性または可逆性腎障害、ネフローゼ、ADPKD、不整脈重篤な心血管疾患(NYHAⅢ、Ⅳ度)、炎症性大腸炎、裂肛ヘルニアの既往、活動性消化性潰瘍、重度の消化管運動障害

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカムといえる(SCrは代用)

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →二重盲検されている     

・解析方法は              →ITT解析されている

・追跡期間                →約90週前後

・脱落率              →AST120群で69+43例が中止

                  →プラセボ群で52+61例が中止とある

・患者背景             →下記図を参照   

 

【患者背景】f:id:pharmapon:20180906151633p:plain

より引用

 

f:id:pharmapon:20180906151613p:plain

より引用

 

【結果】f:id:pharmapon:20180906151650p:plain

より引用

 

f:id:pharmapon:20180906151719p:plain

f:id:pharmapon:20180906151730p:plain

より引用

 

【まとめ・感想】

クレメジン内服は透析導入や腎移植、Scrの倍増を減らすことが出来ないという結果。

クレメジンに関してはかなり飲みにくかったり、服用時間を他の薬とずらす必要があったりと内服にかなり負担がある薬剤だと思うので、この論文を読んだ限りではかなり微妙な薬である印象。

もし透析導入を遅らせるような効果があったとしても、大幅な期間の遅延は期待できなさそう。

本人が内服に負担を感じていたり、予想される余命期間によっては中止を検討してもよい薬剤かと思った。

CAP-KD試験やPMID16564934、PMID17179734などを総合的に考えても、あまり大きな効果は期待できないように思うが、倦怠感などを改善することはできるかもしれない。

 

腎疾患・透析最新の治療2017-2019
by カエレバ

 

透析患者への投薬ガイドブック 改訂3版 慢性腎臓病(CKD)の薬物治療
by カエレバ
わかりやすい透析工学―血液浄化療法の科学的基礎
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【メタ解析】LABA長期使用の安全性はどうですか?【院内抄読会】

かなり前の有名な論文ではありますが、こちらの論文で院内抄読会を行いました。

参考文献 Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events.

PMID:20176343

 

また、近年発表された下記論文と合わせてディスカッションを行いました。

参考文献 Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists.

PMID:29949492

 

仮想症例シナリオはJJCLIPの過去症例を参考にさせていただいています。

 

【仮想症例シナリオ】

あなたはとある病院の薬剤師さんです。

コスモスが秋風にゆれ、木々も少しずつ色づき始めました。

 

秋の香りが強くなってきたある日、外来であなたは喘息の治療で通院している30代の男性患者さんから質問を受けました。

 

患者「今年の春に喘息の状態が悪くなってから、今までのステロイドの吸入から、2つの成分が配合されたこの吸入薬(サルメテロールとフルチカゾンの合剤)になったんだけど、これはよく効くね。今はもう何ともないよ。でもかれこれ半年以上使っているんだけど、こういう薬ってずっと使っていても問題ないのかな?」

 

この患者さんは喘息以外に特に合併症もなく症状も今は比較的落ち着いているとのことでした。あなたは早速サルメテロール/フルチカゾン合剤吸入薬の添付文書を広げてみました。すると“その他の注意”の項目にちょっと気になる情報が記載されていました

 

「本剤の有効成分の1つであるサルメテロールについて米国で実施された喘息患者を対象とした28週間のプラセボ対照多施設共同試験において、主要評価項目である呼吸器に関連する死亡と生命を脅かす事象の総数は患者集団全体ではサルメテロール(エアゾール剤)群とプラセボ群の間に有意差は認められなかったものの、アフリカ系米国人の患者集団では、サルメテロール群に有意に多かった。また副次評価項目の1つである喘息に関連する死亡数は、サルメテロール群に有意に多かった。なお吸入ステロイド剤を併用していた患者集団では、主要及び副次評価項目のいずれにおいてもサルメテロール群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった」

 

患者さんに次回外来までに詳しく調べておくことを約束し、業務後検索してみるとちょうどよさそうな文献を見つけたので読んでみることにしました。

 

参考文献 Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events.

PMID:20176343

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【仮想患者背景】

34歳男性 170㎝、60㎏  既往歴:喘息

半年くらい前に発作がありフルタイドからアドエアに変更。

それ以前はずっとフルタイドを使用。

 

●現在の内服薬

・アドエアディスカス

・メプチンエアー    

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研究デザイン:メタ解析

 論文の内容 

P:喘息患者(平均38.3歳、男性45.3%)

I:LABAまたはLABA/ICS(最低3か月以上)

C:プラセボまたはICS単独(最低3か月以上)

O:喘息関連の挿管、死亡

 

※平均試験期間は7.0か月

 

・Primary Outcomeは明確になっているか     →  明確である

・真のアウトカムかどうか              →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

1、評価者バイアス

・Two reviewers independently extracted data from the selected articles, reconciling differences by consensus

・Attempts were made to contact investigators of previous meta-analyses and the industry sponsors to obtain additional information concerning trials and events.

 →2人の査読者によって独立して行われた。 追加情報を得るためにスポンサーなどへ接触を試みた

 

 2、出版バイアス

・We performed a search of the MEDLINE, EMBASE, and Cochrane databases

・we included pooled trial data from GlaxoSmithKline, because we were unable to obtain individual trial-level information for those events.

 →MEDLINE,EMBASE, Cochrane databasesから抽出。

  さらに情報を集めるためにグラクソからプールされた試験データ収集

 

3、元論文バイアス

 →12RCTのメタ解析。すべてITT解析されている。

 

4、異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

【結果】

1 全体結果

f:id:pharmapon:20181012184336p:plain

 American Journal of Medicine, The, 2010-04-01, Volume 123, Issue 4, Pages 322-328より引用

 

2 サブ解析f:id:pharmapon:20181012184402p:plain

  American Journal of Medicine, The, 2010-04-01, Volume 123, Issue 4, Pages 322-328より引用

 

 【まとめ・感想】

LABA使用によって喘息関連死や挿管が増えるという結果。

参加者からは下記のような意見がでた

・確かに有害事象は増えるという結果だが、コントロール不良からステップアップした経緯があり、すぐにLABA中止が望ましい症例ではないと思う。

・主治医や患者さんとの関係にもよるが、長期間安定していればICSのみへステップダウンを考慮してもよいと感じる。ただ、どのようにステップダウンすればよいかわからない。

・NNHは625程度であり、すぐにLABA中止は望ましくないと思う。まずはこのまま継続するように推奨し、関係によっては患者から主治医へ相談するように話を持って行ってもよいかもしれないと思った。

 

また、最近発表された

Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists.

の結果を合わせてもう一度ディスカッションすると

ハイリスク患者は除かれているものの、喘息増悪は減って喘息関連死は増えないという結果なので、もしLABA使用による危険性があったとしてもかなり軽微ではないか。

・とりあえずよくわかりません!

などの意見が出た。

 

 

このような相反する結果の論文の解釈などはかなり難しいと感じた。

どのような解釈がより妥当そうなのか自分も判断に迷うが、少なくともすぐにLABA中止を提案するような結果ではないと思う。

 

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by カエレバ