病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

【メタ解析】急性心不全に対するトルバプタンの効果はどうですか?

最近心不全入院患者では半分以上の患者でサムスカ内服してる印象。

いちどメタ解析を確認しておく。

 

参考文献:Effects of Tolvaptan in patients with acute heart failure: a systematic review and meta-analysis

PMID: 28633650

 

研究デザイン:メタ解析

 

論文の内容

P:成人の【急性】心不全患者

I:トルバプタンの使用

C:プラセボor他の利尿薬(カルペリチド、フロセミド、従来治療)

O: 全死亡、Na値、体重減少、臨床事象、呼吸困難の改善など

 

・Primary Outcomeは明確になっているか     →  明確である

・真のアウトカムかどうか              →  真のアウトカムといえる

                        (一部代用のアウトカムあり)

 

【メタ解析における4つのバイアス】

1.評価者バイアス

Two authors (Wang Chunbin and Xiong Bo) scanned the titles and abstracts of all retrieved articles independently, and irrelevant studies were excluded at this stage. The eligibility of the remaining articles was further evaluated for disagreement or uncertainty. Disagreements were resolved by discussion or consensus of a third reviewer.

→2人のレビュアーで評価。意見の相違は3人目のレビュアー。

 

2.出版バイアス

We searched the databases of PubMed, EMBASE, and the Cochrane Controlled Trial registry from their starting dates to October 24, 2016

published in English

PubMed、EMBASE、Cochraneから。2016.10.24まで。英語のみ

ファンネルプロット使用

 

3.元論文バイアス

RCTのみ。

 

4.異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

【結果】

全死亡

 figure3

  

入院

 figure4

 

心不全の悪化

figure5

 

腎機能の悪化

figure6

 

 呼吸困難感

figure7

 

 体重

figure8

 

 Na値

figure9

 

 【まとめ・感想】

急性心不全に対してトルバプタンでハードアウトカムの改善は見込めなさそう。

ただ比較的小規模な試験ばかりではある。

フロセミドに比べて腎保護的には働く印象あり。

カルペリチドと比較するなら点滴を抜けることによってせん妄の抑制や早期にリハビリなど開始できる可能性はあるが薬価に見合うほどの効果が望めるかは不明。

ただ、実際にはかなりの患者に使用されてる。

現場でかなり使用してる→いい治療法だ。と盲目的に思い込むことはないようにしたいところ。

次は慢性心不全などへの効果(PMID:29602756)を見てみたいところ。

 

 

 

【RCT】エゼチミブの効果はどうですか?【IMPROVE-IT】

今更感がすごいけどしっかり読んだことがなかったのでIMPROVE-ITを読んでみる。

 

PMID 26039521 

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1410489?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub%3Dwww.ncbi.nlm.nih.gov

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P:50歳以上でACS(ST上昇、非ST上昇の心筋梗塞、高リスク不安定狭心症)による入院後10日以内の患者。

発症後24時間以内のLDL-Cが非治療の患者では50-125mg/dL、長期治療下の患者では50-100mg/dL

 

I:シンバスタチン40㎎ + エゼチミブ10㎎

C:シンバスタチン40㎎

O: 心血管死、心筋梗塞、再入院が必要なUAP、冠動脈血行再建術(無作為化後30日以上)、脳卒中の複合アウトカム

 

副次的評価項目: 全死亡、冠動脈イベント、脳卒中

 

除外基準:CABG予定、CCrが30mL/min以下、活動性肝疾患、強力なスタチンの使用、シクロスポリンやジルチアゼム、フィブラート、アミオダロンなどの使用、重症心不全、肺水腫など

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か     →明確である

・真のアウトカムかどうか     →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか  →されている(ACS標準治療後にランダム化)

・盲検化されているか        →されている   

・解析方法は             →ITT

・追跡率              →約91%

・追跡期間               →約6年(中央値)

・サンプルサイズ        →不明(イベント数は検出力90%で5250例必要という意味?)

 

【患者背景】

  シンバスタチン単独 シンバスタチン+ゼチーア
年齢 63.6±9.8 63.6±9.7
男性(%) 75.9% 75.5%
体重 kg 83.0±17.4 82.9±17.4
糖尿病 27.3% 27.1%
高血圧 61.3% 61.6%
心不全 4.1% 4.6%
喫煙者 33.5% 32.5%
MI既往 20.7% 21.3%
PCI既往 19.8% 19.5%
CABG既往 9.3% 9.3%

 

【結果】

  シンバスタチン単独 シンバスタチン+ゼチーア HR(95%CI) P-Value
primary endpoint 34.7% 32.7% 0.936(0.89-0.99) 0.016

 

【副作用】

おおきく差はなし。

 

【感想・まとめ】

 primary endpointぎりぎり有意差あるものの効果としてはかなり微妙な印象。症例数がかなり多いので有意差が出た部分もある?

NNT=50で、エゼチミブの薬価が177円なので365*177*6*50=約2000万円かけて1件のイベントが減ると考えると・・・・。

アジア人の割合は5%程度であり、日本人に対しての効果はもう少し低いものになる可能性がある。EWTOPIA試験の結果を早く読みたいところ。

REAL-CAD(PMID:29735587)をみても日本人での心血管イベント数はかなり少ない印象。

個人的には脂質コントロール強化する場合はスタチン→スタチン増量→エゼチミブ追加の流れで治療していくのがよいのかなぁと思ったり。

ガイドラインでは2次予防でLDL70以下を目標に設定されているけれど、本当にそこまで全例下げる必要があるのか疑問。

いろんなデータを見れば見るほどわからないことが増えていく・・・。

 

 

 

 

 

 

【RCT】SGLT2阻害薬に腎保護作用はありますか?【CREDENCE】

SGLT2阻害薬の腎保護効果を検証したCREDENCE試験の結果が出たので読んでみる。

 

参考文献

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1811744?query=featured_home

 

プロトコール

https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1811744/suppl_file/nejmoa1811744_protocol.pdf

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P:30歳以上、eGFR30-90ml/min/1.73m2でRAS阻害剤を服用中のT2DM(HbA1c6.5-12.0%)かつ顕性蛋白尿(尿中アルブミン/クレアチニン比300~5000 mg/gCr)の患者

I:カナグリフロジン100㎎

C:プラセボ

O: 透析・腎移植・eGFR15ml/min/1.73m2以下への移行、SCrの倍増、腎もしくは心血管イベントによる死亡の複合

 

除外基準:非糖尿病性腎疾患、T1DMが疑われる患者、腎疾患に対する免疫抑制療法を受けた患者、透析歴または腎移植歴のある患者

 

副次的評価項目: 心血管死・心不全脳卒中心筋梗塞・末期腎不全・SCrの倍増・腎臓死などなど

 

【確認ポイント】 

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →されている   

・解析方法は              →ITT

・追跡率               →約99%?

・追跡期間                →2.62年(中央値)

・サンプルサイズ          →約4200人

・スポンサー                →ヤンセン

 

【患者背景】 Table1・TableS1・S2を参照 両群間に差はなさそう

年齢:63歳くらい

男性:65%程度

白人:65%程度

喫煙者:14%程度

高血圧:97%程度

心不全:15%程度

DM期間:16年程度

心血管疾患:50%程度

HbA1c:8.3%程度

eGFR(ml/min/1.73m2):56程度

尿中アルブミン/クレアチニン比:930mg/gCr程度

 

【結果】

●Primary endpoint  Figure1-3 Table2 FigureS3を参照

 

canagliflozin

placebo

HR(95% CI)

P-value

Primary composite outcome

245/2202

340/2199

0.70(0.59-0.82)

0.00001

doubling of serum creatinine level

118/2202

188/2199

0.60(0.48-0.76)

<0.001

End-stage kidney disease

116/2202

165/2199

0.68(0.54-0.86)

0.002

Cardiovascular death

110/2202

140/2199

0.78(0.61-1.00)

0.05

 

●サブ解析 Figure1-3 FigureS3を参照

Primary composite outcome

canagliflozin

placebo

HR(95% CI)

eGFR30-45ml/min/1.73m2

119/657

153/656

0.75(0.59-0.95)

eGFR45-60ml/min/1.73m2

56/640

102/639

0.52(0.38-0.72)

eGFR60-90ml/min/1.73m2

70/905

85/904

0.82(0.6-1.12)

baseline UACR

     

≦1000

69/1185

88/1163

0.76(0.55-1.04)

>1000

176/1017

252/1036

0.67(0.55-0.81)

 

●副作用 TableS4を参照

  

【まとめ・感想】

SGLT2阻害薬で腎イベントは減少するという結果。

Figure3からは開始初期にeGFRは低下するが継続により腎保護的に働くことが見える。

透析移行や腎関連死も減らしておりNNTも25-45程度と結構いい結果に個人的には見えたのだがどうだろう。

ただ、メリットは1年以上内服継続してからやっと少しずつ出てくる印象。

RAS阻害薬を服用していない患者ではどうなのか。アルブミン尿がない患者ではどうなのかなども気になるところ。

もう少し長くフォローするとまた結果も変わってくるのか?

CKDstage3aあたりが一番効果を得られるのだろうか?

副作用は明らかにSGLT2でケトアシドーシスと尿路感染は増えていそうだがその他の項目はあまり変わらないように見える。ただアンプタは有意差ないものの増える傾向でやはり注意しておいたほうがよいのかもしれない。

腎専門の先生の解釈をうかがってみたいところ。

 

CANVASでは6年ほど追跡、CREDENCEでは2.6年。この差が有害事象などの差に繋がっているか?

【RCT】EPAの効果はどうですか?【JELIS・REDUCE-IT】【院内抄読会】

2019年度はじめの院内抄読会を行いました。

JELIS、REDUCE-ITと今更感のある論文ですがいろんな解釈をみんなでディスカッションするには良いのかなと思い選択しています。

 

【仮想症例シナリオ】

あなたはとある病院の薬剤師さんです。

4月になり山が桜色に化粧をするようになりました。

 

休日、あなたはたまたま近所のドラッグストアでお買い物をしていると、知り合いのおじさんに出会い質問を受けました。

 

おじさん「おぉぉ、ちょっと見ないうちに大きくなったなぁ! あ、そういえば今は病院で薬剤師やってるんだって? なぁなぁちょっと教えてくれよ。なんか最近テレビで見たんだけど、EPAっていう魚の脂が健康にいいんだろ?心臓とか脳にも良いって言ってたよ。中性脂肪も下げるって。

サプリメントにも入っているし、市販薬でも買えるって聞いて来たんだよ。自分は過去に心臓の治療もしてるから買おうかと思って。実際のところ薬剤師的にどうなんだ?」

 

エパデールやロトリガなど、よく処方される機会を見たことがあったあなたでしたが、具体的にどれくらいの効果が期待できるのかはよく知りませんでした。

服用希望もありそうなのでオススメしようとは思ったものの、おじさんは心臓の治療後ということもあり一度Drに相談してからにするようお話しし、後で効果を調べることにしました。

 

すると2つのRCTを見つけることができたため読んでみることにしました。

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【JELIS】の記事はこちら

https://blog.hatena.ne.jp/pharmapon/pharmapon.hatenablog.com/edit?entry=10257846132607301672

 

【REDUCE-IT】 PMID:30415628

研究デザイン:RCT

P:心血管イベントの既往歴がある45歳以上の患者

  もしくは、50歳以上のDMで心血管イベントハイリスクである患者

  空腹時TG:150~499mg/dL 

I:EPA 2g*2/日 

C:ミネラルオイルプラセボ

O: 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、 冠動脈再建術、不安定狭心症の複合

  

※除外基準:重症心不全、予後2年以内が見込まれる疾患、肝障害、HbA1c10%以上、コントロール不良の高血圧、急性または慢性膵炎、PCIなどの予定、スタチン不耐などなど

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか  →層別でランダム化されている

・盲検化されているか         →されている   

・解析方法は              →ITT解析

・追跡率               →93%程度

・追跡期間                →約5年(中央値4.9年)

・サンプルサイズ          →約8000人

・スポンサー                →Amarin社

 

【患者背景】

年齢64歳(中央値)

女性28.8%

白人約90%

一次予防:約30%

二次予防:約70%

BMI30.8 kg/m²(中央値)
登録時のLDL-C 75.0 mg/dL(中央値)

HDL-C40.0 mg/dL(中央値)

TG216.0 mg/dL(中央値)

登録時のエゼチミブ使用:6.4%
登録時の糖尿病:2型糖尿病 約58%,1型糖尿病 0.7%
参加地域:北米,カナダ,オランダ,オーストラリア,ニュージーランド南アフリカ(約71%),東欧(約26%),アジア太平洋(3.2%)

 

【結果】

f:id:pharmapon:20190402224528p:plain

https://www.vascepahcp.com/safety-and-dosing/vascepa-safety/より引用

 

【まとめ・感想】

 JELISで見られたような試験デザインの問題もなく、すさまじい結果が得られている。

普段からEPAの摂取が少ないといわれている欧米の人にとってはかなりのメリットが得られる可能性があるのかも。

ただEPAの摂取量としては4g/日とかなり大量で本邦では保険診療上使用は難しい。

また、TGに関しては開始後4か月で有意に低下しているものの、真のアウトカムで効果が出始めているのは服用後2年程度経過したくらいからに見えるので短期的な内服では効果が得られにくいことがわかるかもしれない。

あくまで追跡期間は5年程度だが徐々に差は広がる傾向にあるので予後が期待でき長期内服する患者では利益がある可能性はある。

Appendixに副作用も載っているが、4g飲んでも重篤な副作用が増えそうな傾向はあまりない。心房細動が有意に増えているが理由は不明。それほど気にしなくてもよい?

 

ちなみに日本循環器学会ガイドライン http://www.j-circ.or.jp/guideline/index.htm

最近更新されたの急性冠症候群ガイドライン2018では二次予防でクラスⅡb

少し古い心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)ではクラスⅠで考慮

となっている。

 

コクランでは効果ないorあってもわずか。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30521670

 

EMAからも否定的なコメント。

https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/omega-3-fatty-acid-medicines

 

【抄読会で出た意見】

・比較的若年でEPAの摂取が少なく、長期的に忘れずに服用できる患者において若干の利益が得られる可能性はあるが強く推奨するものではないのでは。

・含有量の多くないサプリメントを少し摂取する程度ではおそらく効果は得られない。

・日本人では効果薄そう。効果あるとしてもあまり期待せずに。

・二次予防で予後が長い人なら飲んでもよいかも?

・害はあんまりなさそうで効果が期待できる可能性もあるから本人の希望が強ければ内服してもらうのもありかも。ただこちらから積極的に推奨するものではなさそう。

・エパデールTは買うのが大変。高いし。

 

_人人人人人人人人人人人人_
> おいしいお魚食べたい <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

次の抄読会のネタも考えねば。。。。。

【RCT】フェブキソスタットで脳心腎イベントは減りますか?【FREED】

フェブキソスタットの脳心腎イベントが減るかどうかを日本人対象で行ったFREEDの論文が出たので読んでみる

 

参考文献:Febuxostat for Cerebral and CaRdiorenovascular Events PrEvEntion StuDy

https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehz119/5371086

 

下記文献でも試験概要など書いてある

https://www.clinicalkey.jp/#!/content/playContent/1-s2.0-S0914508716000629?returnurl=https:%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0914508716000629%3Fshowall%3Dtrue&referrer=https:%2F%2Fwww.ncbi.nlm.nih.gov%2Fpubmed%2F27005768

PMID: 27005768

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P: 脳心血管疾患リスクをもつ血清尿酸値7.0-9.0mg/dLで65歳以上の外来患者

I:フェブキスタット

C:尿酸値の上昇があればアロプリノール100㎎

O:脳血管障害、心腎血管障害による死亡、脳血管疾患、非致死的心疾患、心不全による入院、動脈硬化性疾患(大動脈瘤、解離、閉塞性動脈硬化)、腎障害(微量アルブミン尿、顕性タンパク尿、SCrの倍増、タンパク尿の悪化)、心房細動の複合

 

副次的評価項目:脳血管障害、心血管障害、腎血管障害、血清尿酸値による脳血管障害、心血管障害、腎血管障害、脳血管障害、心血管障害の病歴の各要素。

血清尿酸、eGFR、尿中ミクロアルブミン/クレアチニン比、尿中タンパク質量、血圧の絶対値と変化

 

※フェブリクは10㎎から開始、4週後に20㎎、8週目に40㎎

※非フェブリク群は尿酸値上昇したらアロプリノール100㎎

※尿酸値2以下にはしないよう調整

 

【組入基準】

・65歳以上の外来患者

・血清尿酸値7.0-9.0mg/dL

・脳心血管疾患リスクがある患者(高血圧、T2DM、腎障害eGFR:30-60mL/min/1.73m2、3か月以上前の脳循環器疾患)

 

【除外基準】

・活動性の痛風患者または1年以内の痛風関節炎患者

・フェブキソスタットorアロプリノール過敏症

・悪性腫瘍患者

ネフローゼ、透析、移植腎、eGFR30mL/min/1.73m2以下

・3か月以内の急性冠症候群、脳卒中

・3か月以内にSCrが50%以上増加している患者

・3か月以内の重症高血圧患者(180-110)

・肝障害(AST,ALTが施設基準2倍以上)

・6MP、アザチオプリン、ビダラビン、ジダノシン使用患者

・1か月以内に尿酸降下薬を使用した患者

・1か月以内に次記の薬の開始、変更(ロサルタン、イルベサルタン、フェノフィブラート、チアジド、ループ)

・ホルモン補充療法のためにエストロゲン製剤を投与されている患者

  

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →おおむね真のアウトカムといってよさそう

                   比較的ソフトなエンドポイントもあり。

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →オープンラベル (PROBE法)    

・解析方法は              →ITT  PPS

・追跡率               →約83%

・追跡期間                →約35か月(中央値)

・患者背景             →下記図を参照

・サンプルサイズ          →1000人 各グループ500人

・スポンサー                →帝人ファーマ

 

【患者背景】

Table1参照してください

 

【結果】

Table2参照、TableS5、TableS6など参照

 

【まとめ・感想】

PROBE法でソフトエンドポイントも含まれており、そもそも複合するエンドポイントも数がかなり多い。尿酸値も有意に差がついているのでフェブキソスタットによる効果なのか尿酸値が低いことによる効果なのかの見分けがつかない。少しデザインに問題がありそう。

主要評価項目で有意差は出ているものの腎障害によるものが大きく、脳心血管イベントなどは差がない。腎障害によるものもTableS6をみるとアルブミン尿のみの差のよう。

eGFRでは差はついておらず、FigureS5からも特に差はない。

そもそも相手は7割無治療。(3割くらいはアロプリノール投与されてる)

 

やはり尿酸値をしっかり下げたほうがよいかどうかは不明。この試験を見るに積極的に下げる必要性は薄いように思われる。

FEATHER Studyでも結果はnegative。尿酸低下療法にもし効果があったとしても限られた患者層、もしくは単一介入では効果が見られないほど小さな影響か。

ただ、入院中だと尿酸値10を超える患者もザラにいるので、そのような患者と下げた方が良い可能性はあるかも?

 

一応uptodateによると尿酸値を下げることによる腎保護は観察研究などで示唆されているものの明確に下げたほうがよい。と結論するようなデータはないとのこと。

無症候性の高尿酸血症を治療することを強く推奨はしていない。

 

アルブミン尿が改善することでかなり長期的(10年、20年とか)に服用した場合に影響が出てくる可能性はあるのかな?よくわからない。

 

 

 

【メタ解析】フロセミドは持続投与したほうがよいですか? その2

今度は心不全患者を対象としたフロセミドの持続投与と間欠投与を比較したメタ解析を読んでみる。

 

参考文献:Continuous infusion vs. intermittent bolus injection of furosemide in acute decompensated heart failure: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.

 

PMID:28940440

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研究デザイン:メタ解析

 

【論文の内容】

P:急性非代償性心不全患者(先天性心疾患、弁膜症、16歳未満、心臓OPE後は除外)

I:フロセミド持続投与

C:フロセミド間欠投与

O:全死亡、入院期間 

 

※副次評価項目:血清クレアチニン変化、体重変化、低K血症、BNP、24・72時間尿量

 

・Primary Outcomeは明確になっているか   →  明確である

・真のアウトカムかどうか            →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

●評価者バイアス

Titles and abstracts were independently screened against eligibility criteria by two authors (KN and JY). The same two reviewers independently screened full texts of qualifying papers. Both reviewers resolved disagreements at all stages

→2人で審査、意見の相違は3人目のレビュアー。

 

●出版バイアス

Ovid MEDLINE, EMBASE, PubMed and the Cochrane Database of Systematic Reviews were searched from inception until May 2017 for RCTs

Publications not written in the English language were excluded.

The bibliographies of included papers and relevant systematic reviews were hand‐searched for additional papers. Experts and authors of papers identified in the search strategy were contacted for additional data as required.

 

→Ovid   MEDLINE   EMBASE   Pubmed   Cochraneから。2017年5月まで。

 英語のみ。追加データなどは問合せ。 

 

●元論文バイアス

RCTのみ。

11.14は単盲検

7.13.16は二重盲検

10.15はオープンラベル

12は不明

funnel plotはなし

 

●異質性バイアス(I2)

→結果を参照

  

【対象study】

f:id:pharmapon:20190219212837p:plain

 

 

【結果】

●(a)全死亡       (b)ICU患者を除いた全死亡

f:id:pharmapon:20190219212855p:plain

 

 ●入院期間

f:id:pharmapon:20190219212911p:plain

 

●体重減少

f:id:pharmapon:20190219212924p:plain

 

●(a) 24時間尿量      (b)バイアスの高い研究14を除いた24時間尿量       (c)72時間尿量

f:id:pharmapon:20190219212937p:plain

 

BNPの減少

f:id:pharmapon:20190219212952p:plain

2018 Feb;73(2):238-247から引用


【まとめ・感想】

心不全患者において全死亡は間欠投与がよさそうな傾向はあるものの有意差なし。

特に持続投与を支持する結果ではなさそう。

フロセミドは配合変化も多い印象なので持続よりも間欠投与のがよい?

手間的にはどちらが大変なのかはよくわからないが看護師的には持続のが楽なのかな?

この研究でも尿量やBNPの減少が死亡とはそれほど関係ないことが示唆されるか。

 

 

【メタ解析】フロセミドは持続投与したほうが良いですか?

2019.2.4修正加筆

 

フロセミドの持続投与と間欠投与を比較したメタ解析を読んでみる。

 

参考文献:Continuous Infusion versus Intermittent Bolus Injection of Furosemide in Critically Ill Patients : A Systematic Review and Meta-analysis

PMID:29454528

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研究デザイン:メタ解析

 

【論文の内容】

P:重症の肺水腫または末梢浮腫患者(16歳未満は除く)

I:フロセミド持続投与

C:フロセミド間欠投与

O:全死亡、入院期間 

 

※副次評価項目:最初の24時間の尿量、治療期間中の血清クレアチニン変化

 

・Primary Outcomeは明確になっているか   →  明確である

・真のアウトカムかどうか            →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

●評価者バイアス

Titles and abstracts were in dependently screened against eligibility criteria by 2authors(A.L.andA.V.).

The same 2 reviewers in dependently screened fulltexts of qualifying papers. Any disagreements at any stage were resolved bythe third reviewer(K.N.).

→2人で審査、意見の相違は3人目のレビュアー。

 

●出版バイアス

Ovid, MEDLINE,EMBASE,PubMed,and the Cochrane Database of Systematic Reviews were searched from their inception until June2017.

Publications not written in the English language were excluded.

The bibliographies of included papers and relevant systematic reviews were hand-searched for additional papers.

Experts and authors of papers identified in the search strategy

were contacted for additional data or missing data.

→Ovid MEDLINE EMBASE PubMed Cochraneから。2017年6月まで。

 英語のみ。追加データ、不足データは問合せ。 

 

 

●元論文バイアス

RCT、ケースコントロール研究、観察研究

コクランのバイアス評価ツール、Newcastle-Ottawa Scaleにてバイアスの評価がされてる。

Funnel plotsは使用されていない

 

●異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

 

【対象study】

f:id:pharmapon:20190202231828p:plain

以下加筆

RCTに関して対象患者群を見ると、

・心臓外科手術の患者

ICUまたはCCU入室中の肺水腫or体液過剰患者

・心原性肺水腫患者

・肺水腫または体液過剰でPaO2/FIO2 300未満

ICU入室中の体液過剰患者

・急性心不全患者

心不全、腎障害患者

 

【結果】

●全死亡

f:id:pharmapon:20190202231844p:plain

 

 ●入院期間

f:id:pharmapon:20190202231854p:plain

 

●24時間尿量

f:id:pharmapon:20190202231904p:plain

 

クレアチニン変化

f:id:pharmapon:20190202231917p:plain

2018 Oct;32(5):2303-2310.より引用


【まとめ・感想】

 尿量は持続投与が多いが、入院期間は間欠投与のが短く全死亡は変わらないという結果。全死亡は変わらないものの入院期間が短いほうが患者にとってのメリットは大きそう。尿量は代用アウトカム。

解析対象の試験も症例数が少なかったり単施設RCTだったりとそれほど信頼性が高そうなものではないように思うが、DOSE trial(PMID:21366472)や、他のメタアナリシス(PMID:28940440)などの結果を見てもおおむね一致した結果が得られていそう。

特に持続投与を支持する結果ではない印象。

 

以下加筆

D先生にご指摘いただき対象の違う研究が散見されるとのこと。

appendixが参照できないためどのような基準で選択されているのか詳細は不明だが、対象患者をもう少しそろえるとまた違った結果になる可能性があるのか。

ただ、PMID28940440では心不全患者のみを対象としており、そちらでも特に持続投与が支持される結果ではないように思われる。

このメタ解析のように持続のが尿量が得られることは実臨床でも経験するが、尿量upが予後改善には必ずしも結び付かないことはこのメタ解析からわかることの1つかも。