【RCT】フェブキソスタットはアロプリノールと比べて安全ですか?【院内抄読会】【CARES】
第2回目の院内薬剤部抄読会を行いました。
【フェブキソスタットはアロプリノールと比べて安全ですか?】
参考文献:Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1710895
PMID:29527974
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【仮想症例シナリオ】
あなたは、とある病院の薬剤師さんです。
梅雨も明け夏も本番となり、日に日に暑さを感じるようになってきました。
ある日、病棟で業務をしていると腎機能が低下している患者にアロプリノールが処方されているのを発見しました。
フェブキソスタットであれば腎機能が低下していてもあまり減量する必要がないことを知っていたあなた。さっそく主治医へフェブキソスタットへの変更はどうかと提案することにしました。
あなた:「先生、●●さんですが腎機能が低下しているのでアロプリノールをフェブキソスタットへ変更するのはいかがでしょうか?」
先生:「あぁ●●さんね。確かに腎機能悪かったよね。ただ、あんまり詳しくは知らないんだけど、最近フェブリクがあまり良くないんじゃないかっていう話を小耳にはさんだんだ。アロプリノールを減量するのではダメかな?」
あなた:「えぇ!?そんな話があるんですね。すいません、また少し調べてみて改めてご連絡します。」
あまりフェブキソスタットで副作用が多いなどの悪い噂を聞いたことがなかったあなた。
さっそくアロプリノールとフェブキソスタットの安全性を調べてみることにしました。
すると、ちょうど良さそうな論文を見つけることができたので、その場で読んでみることにしました。
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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)
論文の内容
P:心血管イベントの既往、または脳血管疾患の既往がある痛風患者(男性は50歳以上・女性は55歳以上)少なくとも尿酸値7mg/dl以上
I:フェブキソスタット群 ※
C:アロプリノール群 ※
O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、緊急血行再建を伴う狭心症の複合アウトカム
※
フェブキソスタットは40㎎から開始し、尿酸値6mg/dl以下になるまで増量。最大80㎎
アロプリノールは300mgから開始し、尿酸値6 mg/dl以下になるまで増量。最大600㎎
腎機能30-60では200mgから開始し最大400㎎まで
【確認ポイント】
・Primary Outcomeは明確になっているか → 明確である
・真のアウトカムかどうか → 真のアウトカムといえる
・適切なランダム化がされているか → されている
・盲検化されているか → されている
・無作為化されている → されている
・解析方法は → mITT解析されている
・追跡率 → 45%弱
・追跡期間 → 32か月(中央値)
・患者背景 → 下記図を参照
・スポンサー → 武田薬品関与(海外では武田が販売)
【患者背景】
Table1 Febuxostat Allopurinol
平均年齢 :64.0歳 65.0歳
体重 :97.7㎏ 97.3歳
CKDstage1-2:47.1% 47.2%
CKDstage3 :52.9% 52.8%
【結果】
Table2
●心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、緊急冠血行再建を伴う狭心症の複合
Febuxostat Allopurinol HR
1344人(9.8%) 1563人(11.3%) 1.03(0.87-1.23)
●心血管死亡
134人(4.3%) 100人(3.2%) 1.34(1.03-1.73)
●脳梗塞
71人(2.3%) 70人(2.3%) 1.01(0.73-1.41)
●心筋梗塞
111人(3.6%) 118人(3.8%) 0.93(0.72-1.21)
●全死亡
243人(0.78%) 119人(6.4%) 1.22(1.01-1.47)
【まとめ】
Primary outcomeは非劣性であるが、心血管死と全死亡は有意に増えるという結果。
日本と比べると投与量が多かったり、かなりメタボな患者背景だったり、追跡率がかなり低いのでどのように解釈するか難しいところではあるが、少なくとも心血管リスクが高い患者に対してフェブリクを積極的に薦める理由は乏しそう。
アロプリノールのがコストも安い。
ただ、リスク増加の程度や服薬回数の違いなどからフェブリクを勧める選択肢があってもよいのかも。
いずれにしても尿酸値をしっかり下げたほうがよいかも含めて適応を考える必要があるだろう。