【メタ解析】LABA長期使用の安全性はどうですか?【院内抄読会】
かなり前の有名な論文ではありますが、こちらの論文で院内抄読会を行いました。
参考文献 Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events.
PMID:20176343
また、近年発表された下記論文と合わせてディスカッションを行いました。
参考文献 Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists.
PMID:29949492
仮想症例シナリオはJJCLIPの過去症例を参考にさせていただいています。
【仮想症例シナリオ】
あなたはとある病院の薬剤師さんです。
コスモスが秋風にゆれ、木々も少しずつ色づき始めました。
秋の香りが強くなってきたある日、外来であなたは喘息の治療で通院している30代の男性患者さんから質問を受けました。
患者「今年の春に喘息の状態が悪くなってから、今までのステロイドの吸入から、2つの成分が配合されたこの吸入薬(サルメテロールとフルチカゾンの合剤)になったんだけど、これはよく効くね。今はもう何ともないよ。でもかれこれ半年以上使っているんだけど、こういう薬ってずっと使っていても問題ないのかな?」
この患者さんは喘息以外に特に合併症もなく症状も今は比較的落ち着いているとのことでした。あなたは早速サルメテロール/フルチカゾン合剤吸入薬の添付文書を広げてみました。すると“その他の注意”の項目にちょっと気になる情報が記載されていました
「本剤の有効成分の1つであるサルメテロールについて米国で実施された喘息患者を対象とした28週間のプラセボ対照多施設共同試験において、主要評価項目である呼吸器に関連する死亡と生命を脅かす事象の総数は患者集団全体ではサルメテロール(エアゾール剤)群とプラセボ群の間に有意差は認められなかったものの、アフリカ系米国人の患者集団では、サルメテロール群に有意に多かった。また副次評価項目の1つである喘息に関連する死亡数は、サルメテロール群に有意に多かった。なお吸入ステロイド剤を併用していた患者集団では、主要及び副次評価項目のいずれにおいてもサルメテロール群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった」
患者さんに次回外来までに詳しく調べておくことを約束し、業務後検索してみるとちょうどよさそうな文献を見つけたので読んでみることにしました。
参考文献 Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events.
PMID:20176343
-----------------------------------------------------------------------------------------------
【仮想患者背景】
34歳男性 170㎝、60㎏ 既往歴:喘息
半年くらい前に発作がありフルタイドからアドエアに変更。
それ以前はずっとフルタイドを使用。
●現在の内服薬
・アドエアディスカス
・メプチンエアー
-------------------------------------------------------------------------------------------------
研究デザイン:メタ解析
論文の内容
P:喘息患者(平均38.3歳、男性45.3%)
I:LABAまたはLABA/ICS(最低3か月以上)
C:プラセボまたはICS単独(最低3か月以上)
O:喘息関連の挿管、死亡
※平均試験期間は7.0か月
・Primary Outcomeは明確になっているか → 明確である
・真のアウトカムかどうか → 真のアウトカムといえる
【メタ解析における4つのバイアス】
1、評価者バイアス
・Two reviewers independently extracted data from the selected articles, reconciling differences by consensus
・Attempts were made to contact investigators of previous meta-analyses and the industry sponsors to obtain additional information concerning trials and events.
→2人の査読者によって独立して行われた。 追加情報を得るためにスポンサーなどへ接触を試みた
2、出版バイアス
・We performed a search of the MEDLINE, EMBASE, and Cochrane databases
・we included pooled trial data from GlaxoSmithKline, because we were unable to obtain individual trial-level information for those events.
→MEDLINE,EMBASE, Cochrane databasesから抽出。
さらに情報を集めるためにグラクソからプールされた試験データ収集
3、元論文バイアス
→12RCTのメタ解析。すべてITT解析されている。
4、異質性バイアス(I2)
→結果を参照
【結果】
1 全体結果
American Journal of Medicine, The, 2010-04-01, Volume 123, Issue 4, Pages 322-328より引用
2 サブ解析
American Journal of Medicine, The, 2010-04-01, Volume 123, Issue 4, Pages 322-328より引用
【まとめ・感想】
LABA使用によって喘息関連死や挿管が増えるという結果。
参加者からは下記のような意見がでた
・確かに有害事象は増えるという結果だが、コントロール不良からステップアップした経緯があり、すぐにLABA中止が望ましい症例ではないと思う。
・主治医や患者さんとの関係にもよるが、長期間安定していればICSのみへステップダウンを考慮してもよいと感じる。ただ、どのようにステップダウンすればよいかわからない。
・NNHは625程度であり、すぐにLABA中止は望ましくないと思う。まずはこのまま継続するように推奨し、関係によっては患者から主治医へ相談するように話を持って行ってもよいかもしれないと思った。
また、最近発表された
Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists.
の結果を合わせてもう一度ディスカッションすると
・ハイリスク患者は除かれているものの、喘息増悪は減って喘息関連死は増えないという結果なので、もしLABA使用による危険性があったとしてもかなり軽微ではないか。
・とりあえずよくわかりません!
などの意見が出た。
このような相反する結果の論文の解釈などはかなり難しいと感じた。
どのような解釈がより妥当そうなのか自分も判断に迷うが、少なくともすぐにLABA中止を提案するような結果ではないと思う。
HP(ヒューレット・パッカード) HP(ヒューレット・パッカード) シングルモニターアーム BT861AA | ||||
|