病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

【RCT】EPAの効果はどうですか?【JELIS・REDUCE-IT】【院内抄読会】

2019年度はじめの院内抄読会を行いました。

JELIS、REDUCE-ITと今更感のある論文ですがいろんな解釈をみんなでディスカッションするには良いのかなと思い選択しています。

 

【仮想症例シナリオ】

あなたはとある病院の薬剤師さんです。

4月になり山が桜色に化粧をするようになりました。

 

休日、あなたはたまたま近所のドラッグストアでお買い物をしていると、知り合いのおじさんに出会い質問を受けました。

 

おじさん「おぉぉ、ちょっと見ないうちに大きくなったなぁ! あ、そういえば今は病院で薬剤師やってるんだって? なぁなぁちょっと教えてくれよ。なんか最近テレビで見たんだけど、EPAっていう魚の脂が健康にいいんだろ?心臓とか脳にも良いって言ってたよ。中性脂肪も下げるって。

サプリメントにも入っているし、市販薬でも買えるって聞いて来たんだよ。自分は過去に心臓の治療もしてるから買おうかと思って。実際のところ薬剤師的にどうなんだ?」

 

エパデールやロトリガなど、よく処方される機会を見たことがあったあなたでしたが、具体的にどれくらいの効果が期待できるのかはよく知りませんでした。

服用希望もありそうなのでオススメしようとは思ったものの、おじさんは心臓の治療後ということもあり一度Drに相談してからにするようお話しし、後で効果を調べることにしました。

 

すると2つのRCTを見つけることができたため読んでみることにしました。

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【JELIS】の記事はこちら

https://blog.hatena.ne.jp/pharmapon/pharmapon.hatenablog.com/edit?entry=10257846132607301672

 

【REDUCE-IT】 PMID:30415628

研究デザイン:RCT

P:心血管イベントの既往歴がある45歳以上の患者

  もしくは、50歳以上のDMで心血管イベントハイリスクである患者

  空腹時TG:150~499mg/dL 

I:EPA 2g*2/日 

C:ミネラルオイルプラセボ

O: 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、 冠動脈再建術、不安定狭心症の複合

  

※除外基準:重症心不全、予後2年以内が見込まれる疾患、肝障害、HbA1c10%以上、コントロール不良の高血圧、急性または慢性膵炎、PCIなどの予定、スタチン不耐などなど

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか  →層別でランダム化されている

・盲検化されているか         →されている   

・解析方法は              →ITT解析

・追跡率               →93%程度

・追跡期間                →約5年(中央値4.9年)

・サンプルサイズ          →約8000人

・スポンサー                →Amarin社

 

【患者背景】

年齢64歳(中央値)

女性28.8%

白人約90%

一次予防:約30%

二次予防:約70%

BMI30.8 kg/m²(中央値)
登録時のLDL-C 75.0 mg/dL(中央値)

HDL-C40.0 mg/dL(中央値)

TG216.0 mg/dL(中央値)

登録時のエゼチミブ使用:6.4%
登録時の糖尿病:2型糖尿病 約58%,1型糖尿病 0.7%
参加地域:北米,カナダ,オランダ,オーストラリア,ニュージーランド南アフリカ(約71%),東欧(約26%),アジア太平洋(3.2%)

 

【結果】

f:id:pharmapon:20190402224528p:plain

https://www.vascepahcp.com/safety-and-dosing/vascepa-safety/より引用

 

【まとめ・感想】

 JELISで見られたような試験デザインの問題もなく、すさまじい結果が得られている。

普段からEPAの摂取が少ないといわれている欧米の人にとってはかなりのメリットが得られる可能性があるのかも。

ただEPAの摂取量としては4g/日とかなり大量で本邦では保険診療上使用は難しい。

また、TGに関しては開始後4か月で有意に低下しているものの、真のアウトカムで効果が出始めているのは服用後2年程度経過したくらいからに見えるので短期的な内服では効果が得られにくいことがわかるかもしれない。

あくまで追跡期間は5年程度だが徐々に差は広がる傾向にあるので予後が期待でき長期内服する患者では利益がある可能性はある。

Appendixに副作用も載っているが、4g飲んでも重篤な副作用が増えそうな傾向はあまりない。心房細動が有意に増えているが理由は不明。それほど気にしなくてもよい?

 

ちなみに日本循環器学会ガイドライン http://www.j-circ.or.jp/guideline/index.htm

最近更新されたの急性冠症候群ガイドライン2018では二次予防でクラスⅡb

少し古い心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)ではクラスⅠで考慮

となっている。

 

コクランでは効果ないorあってもわずか。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30521670

 

EMAからも否定的なコメント。

https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/omega-3-fatty-acid-medicines

 

【抄読会で出た意見】

・比較的若年でEPAの摂取が少なく、長期的に忘れずに服用できる患者において若干の利益が得られる可能性はあるが強く推奨するものではないのでは。

・含有量の多くないサプリメントを少し摂取する程度ではおそらく効果は得られない。

・日本人では効果薄そう。効果あるとしてもあまり期待せずに。

・二次予防で予後が長い人なら飲んでもよいかも?

・害はあんまりなさそうで効果が期待できる可能性もあるから本人の希望が強ければ内服してもらうのもありかも。ただこちらから積極的に推奨するものではなさそう。

・エパデールTは買うのが大変。高いし。

 

_人人人人人人人人人人人人_
> おいしいお魚食べたい <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

次の抄読会のネタも考えねば。。。。。