【RCT】デュロキセチンの有効性・安全性はどうですか?【院内抄読会】
【仮想症例シナリオ】
あなたはとある病院の薬剤師さんです。
梅雨も明け、夏の暑さがいっそう激しくなってきました。
ある平日の午後、窓口で薬を説明しているとあなたは患者さんから質問を受けました。
患者「すいません。少し教えてほしいんですけど・・・・このサインバルタっていう薬を整形外科で膝とか腰の痛みに対してもらっているんですけど、これって元々はうつ病とかの薬ですよね?」
「この薬を飲み始めてやっぱり精神的に何か不安定になることが多い気がして・・・・膝の痛みもあまり良くなった気がしないんです。」
「うつ病の薬が痛みに効くってのがあんまりしっくり来なくて・・・効いてくるまでに時間がかかったりするんですか?」
痛みに対してトリプタノールやサインバルタなどが使用されることは知っていたあなたでしたが、具体的にどれほどの効果が期待できるのかはよく知りませんでした。
次回受診までにしっかりデータを調べておくことを患者さんにお伝えし、業後論文を探してみるとRCTを見つけることができたため読んでみることにしました。
参考文献:Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Phase III Trial of Duloxetine Monotherapy in Japanese Patients With Chronic Low Back Pain.
PMID 27831985
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27831985
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【患者背景】
62歳 女性 160㎝ 63㎏
既往歴:腰痛 高血圧
検査値:
内服薬:
・アムロジピン5㎎ 1T/朝
・セレコックス100㎎ 4T/2x
・ムコスタ100㎎ 3T/3x
・ワントラム100㎎ 1T/朝
・トラマール25㎎ 1T/とんぷく
・ロキソプロフェンテープ
・スミルスチック
【X-5day~下記開始】
・サインバルタ20㎎ 1T/寝る前
アドヒアランス: よい
生活習慣:最近夫が定年で仕事を退職し毎日家にいるためストレス
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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)
論文の内容
P:NSAID無効のBPI4以上の腰痛が6か月以上持続した20-80歳の外来患者
I:デュロキセチン20㎎を1週間→40㎎1週間→60mg
C:プラセボ
O:14週目までのBPIスコアの変化
副次的評価項目:BPI疼痛、患者改善の印象、重症度の印象、ローランドモリスのアンケート、安全性と忍容性
NSAID、筋弛緩薬、抗うつ薬、BZDなどの併用は禁止(appendix1)
【確認ポイント】
・Primary Outcomeは明確か →明確である
・真のアウトカムかどうか →真のアウトカム
・適切なランダム化がされているか →されている
・盲検化されているか →されている
・解析方法は →FAS
・追跡率 →90.1% 88.5%
・追跡期間 →14週
・サンプルサイズ →約450人
・スポンサー →塩野義 リリー
Exclucion
・腰部手術の既往
・1か月前に腰痛緩和のための侵襲的治療を受けたもの
・松葉づえや歩行器を必要とする人
・大うつ病性障害、C-SSRSで自殺傾向があると診断されたもの
【患者背景】
Spine (Phila Pa 1976). 2016 Nov 15;41(22):1709-1717.より引用
【結果】
平均疼痛スコアの変化 応答率
Spine (Phila Pa 1976). 2016 Nov 15;41(22):1709-1717.より引用
【有害事象】
Spine (Phila Pa 1976). 2016 Nov 15;41(22):1709-1717.より引用
【みんなの感想】
比較的投与初期からプラセボと比べ有効であることが示唆されるものの差は11段階中で見れば小さい。エビデンスがあるのは最低でも40㎎~となるが、アウトカムが「痛み」という主観的なものであるとすれば20㎎でも本人が効いていると感じていれば20㎎での維持もありなのかもしれない。
投与初期に副作用を感じやすいことがFigure5から見て取れるため投与初期には注意が必要。
追跡率は比較的高いもののITT解析をすると少し差が小さくなる可能性あり。
うつ素因があるような患者は対象から除外されており、精神的疾患の問題がありそうな患者に使用する際は注意が必要なのかもしれない。
また、あくまでサインバルタ単独での有効性を評価しているため、症例のようにNSAIDやトラマールを使用している患者への上乗せ効果はこの文献からは不明。
トラマールに関してはセロトニン作用の重複なども考えられるため併用開始初期は特に注意が必要なのかもしれない。