【RCT】SGLT2阻害薬の心不全に対する効果はどうですか?【DAPA-HF】
参考文献:Dapagliflozin in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction.
PMID:31535829
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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)
論文の内容
P:18歳以上、EF40%以下でNYHA2-4の心不全患者
基本的にはRAAS阻害薬やβ遮断薬、MRAの標準治療に上乗せ
I:ダパグリフロジン10㎎/日
C:プラセボ
O:心不全の悪化、心血管死の複合
※除外基準:eGFR30ml/min/1.73m2以下、T1DM、低血圧、副作用に忍容性のない患者
【確認ポイント】
・Primary Outcomeは明確か →明確である
・真のアウトカムかどうか →真のアウトカム
・適切なランダム化がされているか →されている
・盲検化されているか →されている
・解析方法は →ITT
・追跡率 →約89%
・追跡期間 →約18.2か月(中央値)
・サンプルサイズ →約4500人
・スポンサー →アストラゼネカ社
【患者背景】
ダパグリフロジン(n=2373) | プラセボ(n=2371) | |
年齢 | 66.2±11.0 | 66.5±10.8 |
女性 | 564(23.8) | 545(23.0) |
BMI | 28.2±6.0 | 28.1±5.9 |
アジア人 | 552(23.3) | 564(23.8) |
HR | 71.5±11.6 | 71.5±11.8 |
収縮期血圧 | 122.0±16.3 | 121.6±16.3 |
EF | 31.2±6.7 | 30.9±6.9 |
既往 | ||
心不全による入院 | 1124(47.4) | 1127(47.5) |
心房細動 | 916(38.6) | 902(38.0) |
DM | 993(41.8) | 990(41.8 |
eGFR (ml/min/1.73m2) | 66.0±19.6 | 65.5±19.3 |
心不全治療薬 | ||
利尿薬 | 2216(93.4) | 2217(93.5) |
ACEI | 1332(56.1) | 1329(56.1) |
ARB | 675(28.4) | 632(26.7) |
ARNI | 250(10.5) | 258(10.9) |
β遮断薬 | 2278(96.0) | 2280(96.2) |
MRA | 1696(71.5) | 1674(70.6) |
ジギタリス | 445(18.8) | 442(18.6) |
DM薬 | ||
BG | 504/993(50.8) | 512/990(51.7) |
SU | 228/993(23.0) | 210/990(21.2) |
DPP4I | 161/993(16.2) | 149/990(15.1) |
GRP1作動薬 | 11/993(1.1) | 10/990(1.0) |
インスリン | 274/993(27.6) | 266/990(26.9) |
N Engl J Med. 2019 Nov 21;381(21):1995-2008.より
【結果】
ダパグリフロジン (n=2373) |
プラセボ (n=2371) |
HR | P-value | |
複合主要評価項目 | 386(16.3) | 502(21.2) | 0.74(0.65-0.85) | <0.001 |
心不全による入院 緊急受診 |
237(10.0) | 326(13.7) | 0.70(0.59-0.83) | NA |
心不全による入院 | 231(9.7) | 318(13.4) | 0.70(0.59-0.83) | NA |
心血管死 | 227(9.6) | 273(11.5) | 0.82(0.69-0.98) | NA |
全死亡 | 276(11.6) | 329(13.9) | 0.83(0.71-0.97) | NA |
N Engl J Med. 2019 Nov 21;381(21):1995-2008.より
ほかの細かい結果はTable2を参照
サブ解析はFigure3
安全性はおおむねプラセボと差がない。
【まとめ・感想】
ソフトエンドポイントもあるが二重盲検であるのでそこまで気にしなくてもよさそう。
複合アウトカムについて有意な差があり、今後も使用量が増えていきそう。
ただ、サブ解析をみるとNYHAが3-4では効果が乏しくNYHA2だと効果が大きい。また、NT-proBNPも中央値より低いほうが効果が大きいのでわりと軽症例のがよいのかもしれない。EFも低いほうが効果がありそうで、HFpEFも含んだDLIVER試験やDETERMINE試験の効果がどうなるかは気になるところ。
個人的には「利尿作用がある血糖降下薬」というよりも「血糖降下作用がある利尿薬」というイメージ。(だからなに?)
忘れずにいたいのはあくまでも標準治療への上乗せであること。
Table2をみるとHbA1cの低下は-0.21で思ったより下がらないイメージ。DMではない人も含んでいるからか。
下肢切断はやっぱりプラセボに比べて多くないものの、追跡期間はそれほど長くない。
CANVASは約300週、CANVAS-Rでは約110週の追跡で、骨折もたしかCANVASで多いから使用期間が長期になればなるほど上記のような有害事象が増える可能性はあるのかもしれないと個人的に思っている。ただCANVASは300㎎使ってる人もいたような・・。
やはり患者群をみると体格は大柄な人たちがメイン。カリカリの高齢者の方に使用するのは少し気になってしまう・・・。