病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBECD)の安全性について

今話題のCOVID-19の治療薬として期待されているレムデシビルに、添加剤としてスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBECD)が添加されているらしい。

 

注射用のボリコナゾール(VRCZ)に添加されていることは有名で、腎機能低下患者にはSBECDが蓄積するため原則禁忌となっている。

 

添付文書には

腎排泄である注射剤の添加物スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム(SBECD)の蓄積により腎機能障害が悪化する恐れがあるので、経口剤の投与を考慮する

と記載されている。

 

SBECDの蓄積による危険性がどの程度なのか調べてみた。

ちなみにボリコナゾール200㎎バイアル中にSBECDは3200㎎添加されている。

 

①スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンについての総説

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=20213839

全文読めなかったものの、ここにはラットにおいて3000mg/kg投与すると腎および肝臓に毒性が認められたが、これはヒトに投与される投与量の約50倍であったとのこと。

1500mg/kgではイヌの腎臓で毒性は認められなかったとのこと。

ヒトでも研究されており、腎機能障害があるとSBECDは蓄積するものの腎機能への悪影響は認められなかったとの記載がある。

こちらの論文ではそれほどSBECDの危険性は高くないように思われる。

 

②腎障害の程度が異なる患者を対象としたスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンの臨床薬物動態

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=29578585

全文読める。腎機能が低下するにしたがってSBECDのクリアランスは低下し曝露量は増える。症例数は限られているものの安全性、忍容性は良好とのこと。ある程度透析で除去されるとの記載もあり。

この試験ではデラフロキサシンの静注を使用しているが、1日量としてSBECDは4800㎎投与されている。

 

③持続的腎代替療法を受けている重症患者におけるスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBECD)の蓄積と、ボリコナゾールの薬物動態の評価

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25645660

持続的腎代替療法施行中の患者ではSBECDは効率的に除去され、蓄積のリスクは低いとのこと。

CRRTの膜は高フラックスポリエーテルスルホン膜(PES)を使用しており、血流速度は200-300ml/hr、補充液の流量は2000-6000ml/hrとの記載。

 

血液透析患者におけるスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBECD)の薬物動態

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21868395

透析は高フラックス透析装置にてPS膜とセルロース膜が使用。

SBECDは透析である程度除去されるとのこと。

 

 

それほどSBECDの危険性は高くない印象。

VRCZであれば内服薬あるし、ずっとVRCZのivで治療していく患者もそれほど多くないだろう。もしレムデシビル使用することになっても、おそらく5-10日だろうと思われるので・・・あんまり気にしなくてもいいかな?