【メタ解析】Z-Drugの安全性はどうですか?【院内抄読会】
2018/6から行っている院内薬剤部抄読会で使用した論文です。
抄読会ではなるべく幅広い分野で使用する薬剤を取り上げていく方針でやっています。
イメージしやすいよう下記のようなシナリオを用意しています。
参考文献:Z-drugs and risk for falls and fractures in older adults—a systematic review and meta-analysis
PMID:29077902
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【仮想症例シナリオ】
あなたは、とある病院の薬剤師さんです。
梅雨に入ったばかりの6月初旬、雨の日がだんだん多くなってきました。
業務が少し落ち着いて空き時間になったある日の午後、担当病棟のDrから一本の電話がかかってきました。
「最近ゾルピデムとかゾピクロンとかの非ベンゾ(以下Z-Drug)だとω1選択性が高い
から筋弛緩作用が少ないって勉強会で聞いたんだ。
BZD系から積極的にZ-Drugに切り替えていこうと思ってるんだけど、当院ってZ-Drugだと何を採用してる?」
確かに大学の授業でもω1選択性が高いと筋弛緩作用が少なく高齢者に適していると聞いたことがあったあなた。ただ本当に転倒が少なくなるのか疑問に思いました。
Drに採用薬をお伝えし電話を切った後、さっそくパソコンに向かって文献を探してみるとちょうどいい論文を見つけることができたので、その場で読んでみることにしました。
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研究デザイン:メタ解析
論文の内容
P:18歳の成人(HD患者を除く)
I:Z-drugあり ※
C:Z-drug無し ※
O:①骨折 ②転倒 ③外傷
※この論文の中のZ-drug:ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン(日本未発売)
・Primary Outcomeは明確になっているか → 明確である
・真のアウトカムかどうか → 真のアウトカムといえる
メタ解析における4つのバイアス
1、評価者バイアス
・Two investigators identified and extracted independently for potential inclusion (N.T. and L.K.G.).
→2名の評価者が独立してデータ抽出しており、おおむね問題はなさそう
2、出版バイアス
情報元:MEDLINE、EMBASE、crinicaitrial gov
・未出版のデータも探している
・No language or date restrictions were applied in these searches.
→英語とフランス語で探されており、おおむね問題はなさそう。
3、元論文バイアス
・5件のコホート研究と9件の症例対象研究
→Quality score?は2点から7点まで幅広い。少し問題あり。
※Quality scoreが何なのかよくわからなかったが低いと元の論文の信頼度が低いのだろう・・・たぶん。
4、異質性バイアス(I2)
→結果を参照
結果
- 骨折 OR=1.63 (95%CI:1.42~1.87) I2=91% p<0.00001
- 転倒 OR=2.40 (95%CI:0.92~6.27) I2=95% p=0.07
- 外傷 OR=2.05 (95%CI:1.95~2.15) I2=0% p<0.00001
まとめ
教科書的には筋弛緩作用が弱いと勉強したZ-drugではあるが、骨折・外傷は有意に増えるという結果。転倒は有意差こそ出ていないが増える傾向。
骨折・転倒は異質性が高いが、おおむね全体的にZ-Drugの危険性を示す結果となっている。
BZD系と直接比較した文献ではないため、BZD系とZ-Drugでどちらが危険か・安全かはこの文献では何とも言えないが、やはり眠剤使用時は転倒などの有害事象に注意は必要。
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