病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

【RCT】PCSK9阻害剤で心血管イベントは減りますか?【FOURIER study】

院内勉強会でレパーサの勉強会があったが、資料が軒並みLDLの低下についてしか触れていなかったので読んでみることにした。

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参考文献:Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease

 

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1615664?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dwww.ncbi.nlm.nih.gov

 

PMID:28304224

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研究デザイン:RCT

論文の内容

P:動脈硬化性心血管疾患を持ち、LDLが70mg/dl以上またはnonHDL100mg/dl以上でスタチンを使用している40-85歳の患者27564人

I:エボロクマブ140mgを2週ごとor420mgを月1回投与

C:プラセボ 

O:心血管死亡、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院や冠血行再建の複合

 

・Primary Outcomeは明確になっているか   →  明確である

・真のアウトカムかどうか          →  真のアウトカムといえる

 ・ランダム化されているか         →  されている

・盲検化されているか           →  されている

・無作為化されている           →  されている       

・解析方法は               →  ITT解析されている

・追跡率                 →  99.6%

・追跡期間                →  26か月(中央値)

・患者背景                →  下記図を参照   

・スポンサー               →  Amgenの関与あり

 

【患者背景】

 Table1  Evolocumab    Placebo

平均年齢:62.5±9.1歳     62.5±8.9歳

体重  :85.0±17.3㎏    85.5±17.4歳

Ezetimibe:5.3%       5.2%    

 

【結果】

Table2

●心血管死亡、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院や冠血行再建の複合

Evolocumab      Placebo          HR

1344人(9.8%)    1563人(11.3%)  0.85(0.79-0.92)

 

●心血管死亡

251人(1.8%)     240人(1.7%)   1.05(0.88-1.25)

 

脳梗塞

207人(1.5%)     262人(1.9%)   0.79(0.66-0.95)

 

●血行再建

759人(5.5%)     965人(7.0%)   0.78(0.71-0.86)

 

確かに主要評価項目ではリスク低下が示されている。

心血管死は全く減っていない。

 

【感想】

確かに主要評価項目でリスクの低下は示されているが、リスク低下はそれほど大きくない印象。心血管死は減っていないし、血行再建での低下が効いている印象。

プラセボとの比較だとLDLの下がりによって投与群とプラセボ群はある程度わかってしまうかもしれないし、血行再建はバイアスがかかりやすい?

この試験ではエゼチミブ併用は5%程度(患者背景参照)なので、PCSK9投与の前にエゼチミブをしっかり併用したほうがよいのだろう。

NNTは70程度となるので、70人に高い薬を26か月投与して1人イベントが防止できると考えると・・・コスパは悪いかなぁ。

 

スタチン・エゼチミブ投与でもLDLの下がりが悪く、比較的若年の方には適応となるかもしれない。

 

 

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