【RCT】タケキャブの効果はどうですか?【院内抄読会】
今年最後の薬剤部抄読会を行いました。
【仮想シナリオ】
あなたはとある病院の薬剤師さんです。
年末も近づき、木々は白く雪化粧をするようになりました。
寒さが厳しくなってきたある日、あなたは病棟で仕事をしているとDrから質問をうけました。
医師「薬剤師さん。ちょっと教えてほしいんだけど・・・タケキャブって実際今までのPPIと比べてどうなの?メーカーさんはいいことしか言わないからさ。今までのPPIより効果発現が早くて作用も強いですよって話はよく耳にするんだけど・・・」
タケキャブは既存のPPIより良い。と聞いていたあなたですが、自分でしっかり調べたことはありませんでした。
Drに少し時間をもらい、臨床試験の文献を読んでみることにしました。
参考文献:Randomised clinical trial: efficacy and safety of vonoprazan vs.lansoprazole in patients with gastric or duodenal ulcers – results from two phase 3, non-inferiority randomised controlled trials
PMID:27891632
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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)非劣性試験(非劣性マージン:胃潰瘍8%、十二指腸潰瘍6%)
論文の内容
P:20歳以上の内視鏡的に確認された胃潰瘍または十二指腸潰瘍患者
I:vonoprazan20mg 6or8週(胃潰瘍8週 十二指腸潰瘍6週)
C:lansoprazole30mg 6or8週(胃潰瘍8週 十二指腸潰瘍6週)
除外基準:84日以内のvonoprazan投与歴、潰瘍治療を7日以内に受けた患者、過去5年以内の悪性腫瘍患者、ゾリンジャーエリソン症候群、肝機能異常 等
副次評価項目:2週、4週時点の治癒割合、自覚症状、
【確認ポイント】
・Primary Outcomeは明確か →明確
・真のアウトカムかどうか →真のアウトカムとしてよいだろう
・適切なランダム化がされているか →されている
・盲検化されているか →されている
・追跡率 →おおむね両群95%程度
・追跡期間 →6-8週
・サンプルサイズ →胃潰瘍215人、十二指腸潰瘍175人
・スポンサー →武田薬品
【患者背景】
【結果】
【サブ解析】
【自覚症状】
【副作用】
【まとめ・感想】
胃潰瘍は非劣性。十二指腸潰瘍についてはボノプラザンはランソプラゾールに対して非劣性を証明できなかった。
一般的にボノプラザンはCYPの影響を受けない、効果発現が早い、胃酸分泌抑制効果が協力等で宣伝されていることが多いと思われるが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療という点においてはCYP遺伝子多型がある患者においても(Table3)ランソプラゾールで十分治癒できると思われる。
ただ、胃潰瘍治療に関しては自覚症状改善の割合はボノプラザンのがよさそうにも見受けられるし、PMID12656699ではランソプラゾールはCYP2C19の遺伝子多型によって効果が変わることが示唆されるデータもある。ピロリ菌の除菌についてはボノプラザン使用のが優れていることが他の文献からは示されており、NSAID併用時の潰瘍予防(PMID29196436)やGERD(PMID26559637)などの結果も確認しながらしっかりと適応、適した症例を見極めて使用していくことが必要だろう。
コストや未知の副作用なども考えれば、現状わかっているデータからは既存PPIから全例ボノプラザンに切り替えるほどのインパクトはないのではないか。
【参加者の感想】
・1stで積極的に使用するような成績ではなさそうですね。
・そもそも胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対するランソプラゾールの効果もどれくらいなのかあいまいだった。
・胃潰瘍、十二指腸潰瘍にはランソプラゾールで十分そうですね。
・とりあえずピロリ菌除菌が主な戦場ですか?
・自覚症状が強そうな症例では選択肢になるのかも?