病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

【メタ解析】脂質低下は死亡率を下げますか?

【背景】

JELIS試験ではEPAで一定の効果はありそうな結果(期待通りだったかは別にして)だったので関連するメタ解析を読んでみた。

 

参考文献:Effect of Different Antilipidemic Agents and Diets on Mortality A Systematic Review

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=15824290

PMID: 15824290

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研究デザイン:メタ解析


論文の内容
P:脂質異常症の患者
I:脂質低下介入(薬剤・食事)
C:プラセボまたは通常の食事
O:心臓および非心臓血管イベントによる死亡率

 

・Primary Outcomeは明確になっているか     →  明確である
・真のアウトカムかどうか              →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

 

1、評価者バイアス
・Two of 3 investigators (M.S., M.B., and B.L.) assessed study eligibility and quality blinded to one another’s rating and resolved any disagreement by consensus. Data of eligible trials were abstracted in duplicate, and authors of the original trials were contacted for additional data if needed
→3名のうち2名の評価者でデータ抽出しており、必要に応じて著者から追加データを収集。

 

2、出版バイアス
・We included references from previous meta-analyses and of us (M.S. and M.B.) searched MEDLINE, EMBASE, PASCAL, and the Cochrane Controlled Trials
・No language restrictions were imposed.

・We investigated the presence of publication bias by means of funnel plots
→MEDLINE,EMBASE,PASCAL,Cochrane controlled trialsから抽出。言語制限なし。

 Funnelplot使用

 

3、元論文バイアス
・This systematic review of randomized controlled trials

・thus leaving 97 trials for analysis
→97RCTのメタ解析。元論文がITT解析されているかは未確認です。
 

4、異質性バイアス(I2)
→結果を参照

 

【結果】

A:全死亡   B:心臓死    C:非心臓死

f:id:pharmapon:20180808215633p:plain

 (本文より引用) 2005 Apr 11;165(7):725-30.

【薬別の一次予防・二次予防】

f:id:pharmapon:20180808221717p:plain

 (本文より引用) 2005 Apr 11;165(7):725-30.


 【まとめ・感想】

全死亡はスタチンとEPA製剤で低下するという結果。一次予防・二次予防ともに全死亡を減らすのはスタチンのみ。

フィブラートに至っては一次予防において全死亡を増やすという結果となっている。

フィブラートが非心臓死を増やす理由は何なんだろう。

今回の論文ではスタチンとEPAを支持する結果ではあったが、目の前の患者さんに有用かどうかという視点は忘れずにいたいところ。

メタ解析を読むとむしろ疑問点が増える気がするのは自分だけなのか。

 

循環器内科ゴールデンハンドブック(改訂第4版)

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【メタ解析】PAD(ASO)の治療後はDAPTが良いですか?

【背景】

PADに対して下肢にstentを置いたりして治療した際、DAPTがよいのかSAPTでよいのか。

DAPTの場合はどれくらいの期間行えばよいのか現状明確な決まりはないと記憶しているが、何か最近の論文がないか探してみた。

ちなみに当院ではstent留置後は1か月DAPTをしている。

 

参考文献:A systematic review of the efficacy of aspirin monotherapy versus other antiplatelet therapy regimens in peripheral arterial disease

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=29801560

PMID:29801560
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研究デザイン:メタ解析


論文の内容
P:PADで跛行症状がある患者、過去に末梢血管の血行再建をした患者
I:DAPT(ASA+チエノピリジン系薬剤)※
C:SAPT
O:心臓および脳血管イベント、有害な四肢イベント、死亡率、生存率
  および安全性(出血)

 

※クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン、チカグレロル

 

・Primary Outcomeは明確になっているか  →  明確である
・真のアウトカムかどうか           →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

 

1、評価者バイアス
・The PubMed/MEDLINE and Cochrane databases were
searched by two investigators (A.J., A.C.B.)
→2名の評価者がデータ抽出しており、評価者バイアスは大きな問題なさそう

 

2、出版バイアス
・The PubMed/MEDLINE and Cochrane databases were searched
・Only English-language reports and peer-reviewed literature were included
→MEDLINE Cochraneデータベースから英語のみ抽出。Funnelplotなどは見つけられなかった。

 

3、元論文バイアス
・We included 14 studies, 10 of which were randomized controlled trials (RCTs).
→10のRCTと4つの観察研究 Supplementary Table2をみると全体的にbiasリスクはそれほど高くなさそう。

 

4、異質性バイアス(I2)
→結果を参照

 

【結果】

Fig2:MACE Fig3:四肢の重大イベント Fig4:死亡率 Fig5:大出血 

f:id:pharmapon:20180806191002p:plain

f:id:pharmapon:20180806191013p:plain

(本文より引用) 2018 Jun;67(6):1922-1932.e6. doi: 10.1016/j.jvs.2018.02.047


【まとめ・感想】

おおむね下肢の虚血に対しDAPTがよさそうな結果が示されているが、期間については特に示されていない。

冠動脈リスクなども合わせて考えていく必要があると思われる。

今後も最新の報告を待ちたい。

 

下の図は論文中に示されていた海外の学会からでているガイドラインをまとめたものだがPADに関してはあまりまとまった意見とはなっておらずGradeも2、2C程度である。

 

f:id:pharmapon:20180806191038p:plain

 (本文より引用) 2018 Jun;67(6):1922-1932.e6. doi: 10.1016/j.jvs.2018.02.047

 

 

病気がみえるvol.2循環器

病気がみえるvol.2循環器

 

 

【RCT】EPA製剤は心血管イベント予防に有効ですか?【JELIS study】

最近はEPAについて少しおさらいをしています。

もっとも有名と思われる論文を確認します。

 

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS) : a randomised open-label,blinded endpoint analysis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17398308

PMID:17398308

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:T-cho250mg/dl以上の患者 ※

I:EPA製剤(1800mg/日)+スタチン(プラバスタチン10mg or シンバスタチン5mg)

C:スタチン単独(プラバスタチン10mg or シンバスタチン5mg)

O: 主要冠動脈イベント(心臓突然死、心筋梗塞、不安定狭心症、血行再建術、冠動脈バイパス術)

 

※男性は40-75歳、女性は閉経後の75歳以下。

除外基準:6か月以内のMI、UAP、重度の心疾患既往、血行再建など

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカムといえる

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →PROBE法

・無作為化されている        →されている       

・解析方法は              →ITT解析されている

・追跡率               →91%

・追跡期間                →4.6年間(平均)

・患者背景             →下記図を参照   

・スポンサー                  →神戸大学

 

【患者背景】

 f:id:pharmapon:20180804102132p:plain

(本文より引用) 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

【結果】f:id:pharmapon:20180804102210p:plain

(本文より引用) 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

f:id:pharmapon:20180804102645p:plain

(本文より引用) 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

 

【まとめ・感想】

 primary endpointの項目がかなり多く、PROBE法に血行再建などはバイアスが入りやすいのでいくらか割り引いて考える必要あり。

Figure3をみると全体的にイベントは減る方向に思えるが有意差をもって減らしているのはそれほど多くない。

特にハードエンドポイントをみると……。

実臨床においては900mg*2/日だとしっかり忘れずに飲めるか。なども考えながら適応を考えるべきか。最近はロトリガ🄬を使うことも多いがそちらのエビデンスはしっかり出ているのだろうか。少し調べてみよう。

 

 

こうすればうまくいく!  薬剤師による処方提案

こうすればうまくいく! 薬剤師による処方提案

 

 

【メタ解析】収縮能の保たれた心不全にはどんな薬剤が有効ですか?【JJCLIP#58】

JJCLIP#58 HFpEFの方への薬物治療についての論文を復習しました。

 

参考文献:Drug treatment effects on outcomes in heart failure with preserved ejection fraction: a systematic review and meta-analysis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28780577

PMID:28780577

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研究デザイン:メタ解析

論文の内容

P:EF40%以上の心不全患者

I:β遮断薬、ACEI、MRA等 心不全治療薬

C:プラセボ

O:全死亡

 

副次アウトカム:心血管死亡、心不全入院、運動能力、QOL、NT-proBNP

 

・Primary Outcomeは明確になっているか   →  明確である

・真のアウトカムかどうか          →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

 

1、評価者バイアス

・independently and in duplicate by two authors (SLZ, FTC)

・Disagreements in abstracted data were adjudicated by a third reviewer (AAN).

・No disagreements required resolution by a third reviewer.

→2名の評価者が独立してデータ抽出しており、データの不一致については第3者によって判断。おおむね問題はなさそう

 

2、出版バイアス

Medline, Embase and the Cochrane Central Register of Controlled Trials hand-screened for additional trials.

・Non-English language publications were excluded.

Egger test did not identify asymmetry for any of the funnel plots

→情報元:MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled
Trials

→英語のみであるが、ハンドサーチも行われておりファンネルプロット使用

→おおむね問題はなさそう

 

3、元論文バイアス

・25研究(5つの論文はバイアスリスク高いと評価されている。が他はすべて低い)

→おおむね問題はなさそう

 

4、異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

【結果】

Primary Outcome 

①全死亡     OR=0.96 (95%CI:0.90~1.03) I2=2% 

f:id:pharmapon:20180729224007p:plain

 (本文より引用) 2018 Mar;104(5):407-415. doi: 10.1136/heartjnl-2017-311652. Epub 2017 Aug 5.

Secondary Outcome

②心血管死亡   OR=0.95 (95%CI:0.87~1.03) I2=0% 

f:id:pharmapon:20180729224000p:plain

  (本文より引用) 2018 Mar;104(5):407-415. doi: 10.1136/heartjnl-2017-311652. Epub 2017 Aug 5.

 ③心不全入院   OR=0.88 (95%CI:0.81~0.95) I2=0% 

f:id:pharmapon:20180729223944p:plain

   (本文より引用) 2018 Mar;104(5):407-415. doi: 10.1136/heartjnl-2017-311652. Epub 2017 Aug 5.

 

【まとめ・感想】

 全死亡、心血管死亡ともに減らないという結果。心不全入院は若干減る結果。

β遮断薬が有効な可能性が示唆されるが、よい結果のAronow試験はプロプラノロールを使用しておりバイアスリスクは高いとされている文献のよう。

EF40%以上で拾ってくるとHFmrEFも若干含んでおり、40%に近い集団が薬剤治療が有効な方向に引っ張っている可能性も示唆されている。

やはり現状HFpEFに対して予後延長効果のある薬剤はない印象。

 

しかし実臨床においては脈拍や血圧が高ければRAAS系やβ遮断薬、胸水があればMRAや他の利尿薬なども使用されHFrEFだろうがHFpEFだろうが結果的に投薬内容は同じような内容になることが多いように感じる。

並存疾患などを合わせて考えていく必要があると思われる。

 

 

循環器疾患ガイドライン総まとめ 2018年 05 月号 [雑誌]: 月刊薬事 増刊
 

 

【院内抄読会】院内抄読会の進め方紹介

当院はベッド数500以上で、常勤勤務薬剤師50人以上とそこそこ大きい病院ですがアカデミックな文化があまりないです。

なので、日頃から英語の論文を読む人はあまりおらず、ガイドラインやメーカーからの情報が拠り所となることが多いです。

 

そんな環境のなか、なるべく論文を読んだことのない人でも気軽に参加してもらえるようJJCLIPを参考にしながら症例シナリオを用意しています。

また、なるべく幅広い分野で使用する薬にフォーカスして論文を選択しています。

 

以下抄読会の進め方です。

みなさまのご参考になれば幸いです。

 

【抄読会の1週間ほど前まで】

・症例シナリオを用意し、文献を提示する。(症例シナリオの例は他記事を参照)

・当日までに参加者にはアブストラクトに簡単に目を通してきてもらう。

 

【抄読会当日】・・・JJCLIPで使用している論文を読むためのワークシート使用

・簡単に背景を説明

 →薬剤Aと薬剤Bの薬理学的な違いなど

 →一般的にどのように使い分けられていることが多いかなど

・参加者にPICOをたててもらう(5分くらい)

・文献をプロジェクターで映してPICOの確認

・患者背景や結果を表や図で確認

・批判的吟味のためのポイントをみんなで確認

 →そのつどわからない用語は説明(ITT解析、PROBE法など)

・臨床にどう活用するかディスカッション

 

【終了後】

・論文のPICOや確認点をまとめ、不参加の人でも振り返りができるように共有(wordファイルなどにまとめ、共有フォルダに入れておく)

 

 

極める! 小児の服薬指導

極める! 小児の服薬指導

 

 

薬剤師よ,心電図を読もう!

薬剤師よ,心電図を読もう!

 

 

 

【観察研究】アピキサバンは透析患者の心房細動にも有効ですか?

【背景】

日本では経口抗凝固薬は基本的にすべて禁忌に該当(ワルファリンは禁忌であるが使用している)しているが、海外では透析患者へもDOACを使用しているようである。

 

【文献】

Outcomes Associated with Apixaban Use in End-Stage Kidney Disease Patients with Atrial Fibrillation in the United States.

https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCULATIONAHA.118.035418?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

PMID:29954737

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【論文のPICO】

P:経口抗凝固薬使用中の心房細動を有する透析患者(25523人)※

I:アピキサバン使用(2351人)

C:ワルファリン使用(23172人)

O:脳卒中・全身性塞栓症・大出血・消化管出血・頭蓋内出血・全死亡

 

【研究対象集団】

Medicare beneficiaries included in the United States Renal Data System (October 2010 to December 2015).

→2010.10~2015.12における米国の腎臓データシステムでのメディケア登録者を対象

 

Table1      Apixaban    Warfarin

平均年齢     68.9歳      68.2歳

HD        2216人     21930人

PD        135人      1242人

CHA2DS2-VASc  5.27       5.24

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

→Prognositic scoreでマッチング

  

【結果】

Table2

 ●脳卒中/全身塞栓症

Apixaban    Warfarin     HR

81/2351                 373/7053   0.88(0.69-1.12)

●大出血

129/2351               715/7053      0.72(0.59-0.87)

●消化管出血

155/2351               710/7053   0.86(0.72-1.02)

●頭蓋内出血

21/2350      111/7050       0.79(0.49-1.26)

●全死亡

159/2351              753/7053   0.85(0.71-1.01)

 

Table9.10

Apixaban10mg      VS      Apixaban5mg  

脳卒中/全身塞栓症   0.61(0.37-0.98)

●大出血        0.98(0.68-1.42)

●消化管出血      1.17(0.84-1.63)

●頭蓋内出血      0.65(0.25-1.67)

●全死亡        0.64(0.45-0.92)

  

【まとめ・感想】

脳卒中/全身性塞栓症は有意差なし。大出血はアピキサバンで有意に少ない。

アピキサバン10mg/日では5mg/日およびワルファリンに比べて脳卒中/全身性塞栓症、死亡が有意に少ないという結果。

確かにアピキサバンはDOACの中では腎排泄率が最も低いですが透析患者に対してもワルファリンと比べれば安全な印象。

ただ、あくまで観察研究であることや塞栓症リスク減少分と出血リスク増大分を比べた時の利益がしっかりあるのかどうかはわからないため、積極的にアピキサバンを勧められるかどうかは不明。(そもそも国内だと透析にDOAC使えないし・・・)

今後いろんなデータが蓄積してきたら使用できるようになるのでしょうか。

その前に腎機能を気にしなくてよいDOACが発売されればよいのですが・・・。

 

薬剤師のための医学論文の読み方・使い方

薬剤師のための医学論文の読み方・使い方

 

 

薬剤師のための医学論文活用ガイド〜エビデンスを探して読んで行動するために必要なこと〜

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【RCT】フェブキソスタットはアロプリノールと比べて安全ですか?【院内抄読会】【CARES】

第2回目の院内薬剤部抄読会を行いました。

 

【フェブキソスタットはアロプリノールと比べて安全ですか?】

参考文献:Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1710895

PMID:29527974

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【仮想症例シナリオ】

あなたは、とある病院の薬剤師さんです。

梅雨も明け夏も本番となり、日に日に暑さを感じるようになってきました。

 

ある日、病棟で業務をしていると腎機能が低下している患者にアロプリノールが処方されているのを発見しました。

フェブキソスタットであれば腎機能が低下していてもあまり減量する必要がないことを知っていたあなた。さっそく主治医へフェブキソスタットへの変更はどうかと提案することにしました。

 

あなた:「先生、●●さんですが腎機能が低下しているのでアロプリノールをフェブキソスタットへ変更するのはいかがでしょうか?」

 

先生:「あぁ●●さんね。確かに腎機能悪かったよね。ただ、あんまり詳しくは知らないんだけど、最近フェブリクがあまり良くないんじゃないかっていう話を小耳にはさんだんだ。アロプリノールを減量するのではダメかな?」

 

あなた:「えぇ!?そんな話があるんですね。すいません、また少し調べてみて改めてご連絡します。」

 

あまりフェブキソスタットで副作用が多いなどの悪い噂を聞いたことがなかったあなた。

さっそくアロプリノールとフェブキソスタットの安全性を調べてみることにしました。

すると、ちょうど良さそうな論文を見つけることができたので、その場で読んでみることにしました。

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:心血管イベントの既往、または脳血管疾患の既往がある痛風患者(男性は50歳以上・女性は55歳以上)少なくとも尿酸値7mg/dl以上

I:フェブキソスタット群  ※

C:アロプリノール群    ※

O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、緊急血行再建を伴う狭心症の複合アウトカム

 

フェブキソスタットは40㎎から開始し、尿酸値6mg/dl以下になるまで増量。最大80㎎

アロプリノールは300mgから開始し、尿酸値6 mg/dl以下になるまで増量。最大600㎎

腎機能30-60では200mgから開始し最大400㎎まで

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確になっているか →  明確である

・真のアウトカムかどうか        →  真のアウトカムといえる

・適切なランダム化がされているか      →  されている

・盲検化されているか          →  されている

・無作為化されている          →  されている       

・解析方法は               →  mITT解析されている

・追跡率                 →  45%弱

・追跡期間                 →  32か月(中央値)

・患者背景              →  下記図を参照   

・スポンサー                   →  武田薬品関与(海外では武田が販売)

 

【患者背景】

 Table1   Febuxostat     Allopurinol

平均年齢   :64.0歳        65.0歳

体重     :97.7㎏       97.3歳

CKDstage1-2:47.1%        47.2%    

CKDstage3 :52.9%       52.8%

 

 

【結果】

Table2

●心血管死亡、心筋梗塞脳卒中、緊急冠血行再建を伴う狭心症の複合

Febuxostat        Allopurinol          HR

1344人(9.8%)    1563人(11.3%)   1.03(0.87-1.23)

 

●心血管死亡

134人(4.3%)     100人(3.2%)   1.34(1.03-1.73)

 

脳梗塞

71人(2.3%)     70人(2.3%)   1.01(0.73-1.41)

 

心筋梗塞

111人(3.6%)     118人(3.8%)   0.93(0.72-1.21)

 

●全死亡

243人(0.78%)    119人(6.4%)   1.22(1.01-1.47)

 

【まとめ】

Primary outcomeは非劣性であるが、心血管死と全死亡は有意に増えるという結果。

日本と比べると投与量が多かったり、かなりメタボな患者背景だったり、追跡率がかなり低いのでどのように解釈するか難しいところではあるが、少なくとも心血管リスクが高い患者に対してフェブリクを積極的に薦める理由は乏しそう。

アロプリノールのがコストも安い。

ただ、リスク増加の程度や服薬回数の違いなどからフェブリクを勧める選択肢があってもよいのかも。

いずれにしても尿酸値をしっかり下げたほうがよいかも含めて適応を考える必要があるだろう。

 

 

薬がみえる vol.3

薬がみえる vol.3