病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

心房細動に対するアブレーションについて

最近いろいろあって全く文献が読めず更新できていないので11月9-11日に参加したアブレーション関連大会で発表した件について記事にしてみる。

 

【アブレーション周術期の鎮静・鎮痛管理について】

アブレーション(肺静脈隔離術)周術期の鎮静・鎮痛管理においては特に確立された方法はなく、各施設で異なる薬剤が使用されている。

自分の知る限りでは

プロポフォール、プレセデックス、フェンタニル、レペタン、ソセゴン、イソゾールなどから2種、3種を選択して使用することが多く、プレセデックス+プロポフォールもしくはプレセデックス+フェンタニルあたりが多いように感じる。

 

当院ではもともとプロポフォール+プレセデックス+イソゾールで行っていたが、高BMI患者やSASのある患者で難渋することが多かったためレペタン+プレセデックス+イソゾールへ変更した。

レペタン群ではおおむねプロポフォール群にくらべ主治医の感触もよく、鎮静深度なども良好な値が得られていたが術後の嘔吐が多く、プリンぺランの予防投与も効果が薄かった。

その後フェンタニル+プレセデックス+イソゾールでの管理へ変更したところ術後の嘔吐は少なくなり、主治医の感触もレペタン使用時に比べて良好である。

 

以下当院での具体的な投与方法について紹介する。

 

イソゾール2ml程度をフラッシュし、フェンタニル10A+生食30mlとプレセデックス200ug/50mlをそれぞれ3-10ml/hr(主治医判断により患者の体格によって決定)の速度で開始(術中の鎮静具合をみて適時調節)。

体動時にはイソゾール2ml程度を追加もしくはフェンタニル早送り。

焼灼開始時にはフェンタニル早送り

 

【アブレーションと心不全、抗不整脈薬、抗凝固薬について】

CASTLE AF、CABANAtrial、KPAFregistry、J-CARAFなど、近年アブレーションによる心不全患者の予後改善データなどが蓄積してきて、適応となるならば積極的にアブレーションをすることでのメリットが大きいのでは。と言われてきた。

アブレーションによって抗凝固薬や抗不整脈薬も中止できる可能性があり患者のQOLに対してもメリットは少なくない。

最近ではアブレーションにより洞調律を維持できることで腎機能維持にもつながることが示唆されるようなデータもある。

種々の文献からはアブレーションによっておおよそ5年で6割ほどの患者は抗凝固療法を中止できており出血のリスクが下がることは大きなメリットである。

周術期にOACを継続するかどうかについてはワーファリンではCOMPAREstudyにて継続が望ましいことが示されていたが、近年DOACでもデータが集まりつつある。

プラザキサのRE-CIRCUIT試験では内服継続が望ましいことが示されているし、VENTURE-AF試験、AXAFA-AFNET5試験でもそれぞれイグザレルトとエリキュースで継続が望ましいことが示唆されている。

しかしJACRE-R registryではイグザレルトにおいてワンスキップ法で問題ないことも示唆されている。

これらの試験結果を踏まえたESCのExpert consensusではワーファリン、プラザキサは内服継続がクラスⅠ、その他のDOACでは継続下がクラスⅡa、ワンスキップ法もクラスⅡaとすべてのDOACで継続がクラスⅠではないことに注意が必要である。

 

当院ではワーファリン以外はワンスキップ法にて周術期のDOAC休薬を管理しているが今まで脳梗塞を起こした患者はいない。継続下で、もし心タンポナーデなどの合併症が起こった場合ワンスキップ法に比べて重篤となることが予想される。

継続下でのデータが蓄積されてきている現状を踏まえ、主治医と今後のDOAC周術期の休薬をどうするか協議していくべきかと考える。

Xa阻害剤の中和剤が発売されたら継続でどうかと協議してみてもよいかと思っている。

  

アブレーション術後3ヵ月はbranking periodと言われ、再発リスクが高いため抗不整脈薬の使用が推奨される。

使用する薬剤はⅠ群の抗不整脈薬が多く、高リスク患者ではベプリコールを使用することが多い。

アミオダロンの有効性を示す報告はAMIO-CAT試験があるが、ベプリコールの有効性を示す報告も存在する。(PMID:26654806)

ただ、ベプリコール使用によってQTが延長し、増量するとその傾向は顕著である。中にはベプリコールによってTdpが誘発された症例もあったため、ベプリコール使用でも洞調律維持が困難でQTが延長が有意な場合アミオダロンを推奨する選択あるだろう。

 

 

 

【RCT】低用量アスピリン使用時のボノプラザン(タケキャブ)の効果はどうですか?

【背景】

最近やっとボノプラザンが採用となり、かなりの量が使用されるようになっている。

なかにはPPIをすべて切り替えているDrもいるので復習。

 

参考文献:Vonoprazan prevents low-dose aspirin-associated ulcer recurrence: randomised phase 3 study.

PMID:29196436

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=29196436

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)非劣性試験 非劣性マージン8.7%

論文の内容

P:消化性潰瘍既往で、低用量アスピリン継続が必要な患者(621人)

I:ボノプラザン10㎎

I:ボノプラザン20㎎

C:ランソプラゾール15㎎

O:消化性潰瘍の再発(24週)

 

※除外基準:

アスピリン喘息の既往

胃酸分泌に影響を与える手術の予定または既往

Zollinger-Ellison症候群または他の胃酸過剰分泌障害

腎障害、肝障害、5年以内の悪性腫瘍既往

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか       →真のアウトカムでよさそう

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →二重盲検されている      

・解析方法は              →FAS解析

・追跡率               →92%くらい

・追跡期間               →24週

・患者背景             →下記図を参照   

  

【患者背景】f:id:pharmapon:20181102153651p:plain

2018 Jun;67(6):1033-1041.より引用

 

【結果】

 24週

ランソプラゾール15㎎

ボノプラザン10㎎

ボノプラザン20㎎

消化性潰瘍再発率

2.8%

0.5%

1.5%

胃・十二指腸の出血

2.9%

0%

0%

重篤な副作用

1.4%

2%

2%

ランソプラゾール ボノプラザン10㎎(95% CI −4.743 to 0.124)

ランソプラゾール ボノプラザン20㎎( 95% CI −4.095 to 1.523)

 

f:id:pharmapon:20181102153715p:plain

2018 Jun;67(6):1033-1041.より引用

 

 【有害事象】f:id:pharmapon:20181102153732p:plain

2018 Jun;67(6):1033-1041.より引用

 

【まとめ・感想】

 24週のフォローではボノプラザンでランソプラゾールより再発が少ない傾向はあるもののランソプラゾールと非劣性。

その後の2年間のフォローではボノプラザンのがよさそうな結果。

確かにピロリ菌除菌時はボノプラザンはよさそうな印象だが、他の臨床試験の(PMID:27891632)結果などをみても既存PPIに対して圧倒的な結果などは出せていないし、個人的には全例既存PPIから切り替えるほどではない気がする。

コストや未知の副作用を考えると既存PPI使用下でも再発があった場合に考慮するくらいかなぁという印象。

ただ、たまにPPIからボノプラザンに変えると胸焼け症状がかなり良くなった!という患者さんも経験する。

 

感染症プラチナマニュアル 2018
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【RCT】クレメジンは腎機能維持に効果がありますか?【EPPIC trial】

【背景】

たまたまクレメジンをどのように飲むのがよいか。と少し調剤室で話題になったので飲み方は置いといて有効性についての論文を読んでみる。

 

参考文献:Randomized Placebo-Controlled EPPIC Trials of AST-120 in CKD.

PMID:22288014

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:SCr 男性:2.0~5.0mg/dl 女性:1.5~5.0mg/dlの中等度~重度の成人CKD患者2035人

E:標準治療+吸着炭(AST120)9g/日

C:標準治療+プラセボ

O:透析開始、腎移植、SCr倍増の複合

 

※除外基準:免疫抑制、腎移植、吸収不良、高血圧、閉塞性または可逆性腎障害、ネフローゼ、ADPKD、不整脈重篤な心血管疾患(NYHAⅢ、Ⅳ度)、炎症性大腸炎、裂肛ヘルニアの既往、活動性消化性潰瘍、重度の消化管運動障害

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカムといえる(SCrは代用)

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →二重盲検されている     

・解析方法は              →ITT解析されている

・追跡期間                →約90週前後

・脱落率              →AST120群で69+43例が中止

                  →プラセボ群で52+61例が中止とある

・患者背景             →下記図を参照   

 

【患者背景】f:id:pharmapon:20180906151633p:plain

より引用

 

f:id:pharmapon:20180906151613p:plain

より引用

 

【結果】f:id:pharmapon:20180906151650p:plain

より引用

 

f:id:pharmapon:20180906151719p:plain

f:id:pharmapon:20180906151730p:plain

より引用

 

【まとめ・感想】

クレメジン内服は透析導入や腎移植、Scrの倍増を減らすことが出来ないという結果。

クレメジンに関してはかなり飲みにくかったり、服用時間を他の薬とずらす必要があったりと内服にかなり負担がある薬剤だと思うので、この論文を読んだ限りではかなり微妙な薬である印象。

もし透析導入を遅らせるような効果があったとしても、大幅な期間の遅延は期待できなさそう。

本人が内服に負担を感じていたり、予想される余命期間によっては中止を検討してもよい薬剤かと思った。

CAP-KD試験やPMID16564934、PMID17179734などを総合的に考えても、あまり大きな効果は期待できないように思うが、倦怠感などを改善することはできるかもしれない。

 

腎疾患・透析最新の治療2017-2019
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透析患者への投薬ガイドブック 改訂3版 慢性腎臓病(CKD)の薬物治療
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わかりやすい透析工学―血液浄化療法の科学的基礎
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【メタ解析】LABA長期使用の安全性はどうですか?【院内抄読会】

かなり前の有名な論文ではありますが、こちらの論文で院内抄読会を行いました。

参考文献 Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events.

PMID:20176343

 

また、近年発表された下記論文と合わせてディスカッションを行いました。

参考文献 Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists.

PMID:29949492

 

仮想症例シナリオはJJCLIPの過去症例を参考にさせていただいています。

 

【仮想症例シナリオ】

あなたはとある病院の薬剤師さんです。

コスモスが秋風にゆれ、木々も少しずつ色づき始めました。

 

秋の香りが強くなってきたある日、外来であなたは喘息の治療で通院している30代の男性患者さんから質問を受けました。

 

患者「今年の春に喘息の状態が悪くなってから、今までのステロイドの吸入から、2つの成分が配合されたこの吸入薬(サルメテロールとフルチカゾンの合剤)になったんだけど、これはよく効くね。今はもう何ともないよ。でもかれこれ半年以上使っているんだけど、こういう薬ってずっと使っていても問題ないのかな?」

 

この患者さんは喘息以外に特に合併症もなく症状も今は比較的落ち着いているとのことでした。あなたは早速サルメテロール/フルチカゾン合剤吸入薬の添付文書を広げてみました。すると“その他の注意”の項目にちょっと気になる情報が記載されていました

 

「本剤の有効成分の1つであるサルメテロールについて米国で実施された喘息患者を対象とした28週間のプラセボ対照多施設共同試験において、主要評価項目である呼吸器に関連する死亡と生命を脅かす事象の総数は患者集団全体ではサルメテロール(エアゾール剤)群とプラセボ群の間に有意差は認められなかったものの、アフリカ系米国人の患者集団では、サルメテロール群に有意に多かった。また副次評価項目の1つである喘息に関連する死亡数は、サルメテロール群に有意に多かった。なお吸入ステロイド剤を併用していた患者集団では、主要及び副次評価項目のいずれにおいてもサルメテロール群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった」

 

患者さんに次回外来までに詳しく調べておくことを約束し、業務後検索してみるとちょうどよさそうな文献を見つけたので読んでみることにしました。

 

参考文献 Long-acting beta-agonists with and without inhaled corticosteroids and catastrophic asthma events.

PMID:20176343

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【仮想患者背景】

34歳男性 170㎝、60㎏  既往歴:喘息

半年くらい前に発作がありフルタイドからアドエアに変更。

それ以前はずっとフルタイドを使用。

 

●現在の内服薬

・アドエアディスカス

・メプチンエアー    

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研究デザイン:メタ解析

 論文の内容 

P:喘息患者(平均38.3歳、男性45.3%)

I:LABAまたはLABA/ICS(最低3か月以上)

C:プラセボまたはICS単独(最低3か月以上)

O:喘息関連の挿管、死亡

 

※平均試験期間は7.0か月

 

・Primary Outcomeは明確になっているか     →  明確である

・真のアウトカムかどうか              →  真のアウトカムといえる

 

【メタ解析における4つのバイアス】

1、評価者バイアス

・Two reviewers independently extracted data from the selected articles, reconciling differences by consensus

・Attempts were made to contact investigators of previous meta-analyses and the industry sponsors to obtain additional information concerning trials and events.

 →2人の査読者によって独立して行われた。 追加情報を得るためにスポンサーなどへ接触を試みた

 

 2、出版バイアス

・We performed a search of the MEDLINE, EMBASE, and Cochrane databases

・we included pooled trial data from GlaxoSmithKline, because we were unable to obtain individual trial-level information for those events.

 →MEDLINE,EMBASE, Cochrane databasesから抽出。

  さらに情報を集めるためにグラクソからプールされた試験データ収集

 

3、元論文バイアス

 →12RCTのメタ解析。すべてITT解析されている。

 

4、異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

【結果】

1 全体結果

f:id:pharmapon:20181012184336p:plain

 American Journal of Medicine, The, 2010-04-01, Volume 123, Issue 4, Pages 322-328より引用

 

2 サブ解析f:id:pharmapon:20181012184402p:plain

  American Journal of Medicine, The, 2010-04-01, Volume 123, Issue 4, Pages 322-328より引用

 

 【まとめ・感想】

LABA使用によって喘息関連死や挿管が増えるという結果。

参加者からは下記のような意見がでた

・確かに有害事象は増えるという結果だが、コントロール不良からステップアップした経緯があり、すぐにLABA中止が望ましい症例ではないと思う。

・主治医や患者さんとの関係にもよるが、長期間安定していればICSのみへステップダウンを考慮してもよいと感じる。ただ、どのようにステップダウンすればよいかわからない。

・NNHは625程度であり、すぐにLABA中止は望ましくないと思う。まずはこのまま継続するように推奨し、関係によっては患者から主治医へ相談するように話を持って行ってもよいかもしれないと思った。

 

また、最近発表された

Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists.

の結果を合わせてもう一度ディスカッションすると

ハイリスク患者は除かれているものの、喘息増悪は減って喘息関連死は増えないという結果なので、もしLABA使用による危険性があったとしてもかなり軽微ではないか。

・とりあえずよくわかりません!

などの意見が出た。

 

 

このような相反する結果の論文の解釈などはかなり難しいと感じた。

どのような解釈がより妥当そうなのか自分も判断に迷うが、少なくともすぐにLABA中止を提案するような結果ではないと思う。

 

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【RCT】PCI後DAPT構成薬の切り替えは有効ですか?

【背景】

PCIでステント留置後の患者はDAPTが推奨されている。

近年プラスグレルやチカグレロルなど新規のP2Y12阻害剤が発売され、アスピリン+クロピドグレルよりも有効な可能性が示唆されているが、出血が多い可能性がある。

 

参考文献:Benefit of switching dual antiplatelet therapy after acute coronary syndrome: the TOPIC (timing of platelet inhibition after acute coronary syndrome) randomized study.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28510646

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:18歳以上でPCI後のACS患者

I:アスピリン+新規P2Y12阻害剤で1か月。その後アスピリン+クロピドグレルで11か月。

C:アスピリン+新規P2Y12阻害剤を1年継続

O:ACS発症後1年の心血管死、緊急冠動脈血行再建に至る緊急入院、脳卒中、出血

 

※除外基準:頭蓋内出血の既往、アスピリン、P2Y12阻害剤の禁忌、過去12か月の大量出血、妊婦、血小板減少症、ACS後1か月以内の重大な有害事象

 

※研究前未治療だった患者はアスピリン300㎎。PCI前にチカグレロル180㎎またはプラスグレル60㎎でloading。

維持量はアスピリン75㎎+チカグレロル180㎎/日orプラスグレル10mg/日orクロピドグレル75㎎

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか       →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →オープンラベル

・無作為化されている        →されている       

・解析方法は              →mITT解析

・追跡率              →約98%

・追跡期間             →1年

・患者背景             →下記図を参照   

 

【患者背景】

f:id:pharmapon:20181005111144p:plain

Eur Heart J. 2017 Nov 1;38(41):3070-3078より引用

 

f:id:pharmapon:20181005111159p:plain

Eur Heart J. 2017 Nov 1;38(41):3070-3078より引用

 

【結果】f:id:pharmapon:20181005111228p:plain

Eur Heart J. 2017 Nov 1;38(41):3070-3078より引用

 

primary endpoint

f:id:pharmapon:20181005111243p:plain

Eur Heart J. 2017 Nov 1;38(41):3070-3078より引用

 

bleeding

f:id:pharmapon:20181005111301p:plain

Eur Heart J. 2017 Nov 1;38(41):3070-3078より引用

 

subgroup

f:id:pharmapon:20181005111320p:plain

Eur Heart J. 2017 Nov 1;38(41):3070-3078より引用

 

【まとめ・感想】

 プラスグレルは日本と投与量が全く異なる点はあるもののクロピドグレルへの切り替えで出血は少ない。むしろ虚血も少ない傾向。

少なくとも切り替えであまり悪い結果はなさそうなので、コスト的にも切り替えは考慮してよさそう。

ただ、現状は推奨されるDAPTの期間もある程度幅があり、しっかり定まっているわけではないのでDAPTをどれだけ継続するのかなども考える必要あり。

ちなみに当院でP2Y12阻害剤を途中で切り替えることはしていない。

 

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【RCT】血液透析患者にスタチンは有効ですか?【AURORA】

【背景】

4Dと共に透析患者へのスタチンの有効性をみたAURORAを読んでみる

 

参考文献:Rosuvastatin and cardiovascular events in patients undergoing hemodialysis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19332456

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:50-80歳の3か月以上血液透析している患者2776例

I:ロスバスタチン10mg/day

C:プラセボ

O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中

 

※除外基準:6か月以内のスタチン使用、腎臓移植予定患者、余命1年未満と思われる患者、悪性腫瘍の既往、コントロールされていない甲状腺機能亢進、高CPK、高ALT

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →二重盲検

・無作為化されている        →されている       

・解析方法は              →ITT解析されている

・追跡期間             →3.2年(中央値)

・患者背景             →下記図を参照   

・スポンサー            →アストラゼネカ

 

【患者背景】

Table1 Rosuvastatin Placebo
Age 64.1±8.6 64.3±8.7
Female sex 538(38.7%) 512(37.0%)
BMI 25.4±4.7 25.4±5.1
SBP 137.1±24.5 136.8±24.5
DBP 75.9±12.8 75.6±12.5
LDL(mg/dl) 100±35 99±34
Clinical history    
Diabetes 388(27.9%) 343(24.8%)
Cardiovascular disease 549(39.5%) 556(40.2%)
Myocardial infarction 146(10.5%) 136(9.8%)

   N Engl J Med 2009; 360:1395-1407より

 

【結果】

Primary end point Rosuvastatin vs Placebo
Hazard Ratio (95% CI)
Combined outcome 0.96(0.84-1.11)
Death from cardiovascular causes 1.00(0.85-1.16)
Nonfatal myocardial infarction 0.84(0.64-1.11)
Nonfatal stroke 1.17(0.79-1.75)

  N Engl J Med 2009; 360:1395-1407より

 

【まとめ・感想】

やはり透析患者へのスタチンは心血管イベントを予防できないという結果。

Figure3をみるとどのサブグループでもスタチンの有効性は示されていない。

透析前からスタチンを飲んでいる場合は中止してもよいかどうかはわからないけれど、透析開始後に開始されるスタチンの必要性は薄いかもしれない。

ただ、Table3からプラセボに比べて特別副作用は多くなさそう。

 

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【RCT】血液透析をしているT2DM患者にスタチンは有効ですか?【4D study】

【背景】

SHARP、AURORAなども含めて、自分が定期的に論文を読むきっかけになった文献である。せっせとスタチンを提案していた自分はかなりの衝撃を受けた覚えがある。

 

参考文献:Atorvastatin in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus Undergoing hemodialysis

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa043545?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dwww.ncbi.nlm.nih.gov

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:維持透析を始めて2年未満の18~80歳のT2DM患者1255例

I:アトルバスタチン20㎎/日

C:プラセボ

O:心臓死、致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合

 

※除外基準:LDL-C<80㎎/dlまたは>190mg/dl、TG>1000㎎/dl、肝機能異常、3か月以内のPCI施行例、慢性心不全患者、収縮期200以上・拡張期110以上の高血圧

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →二重盲検

・無作為化されている        →されている       

・解析方法は              →ITT解析されている

・追跡期間             →4年(中央値)

・患者背景             →下記図を参照   

 

【患者背景】

Characteristic Placebo Atorvastatin
Age 65.7±8.3 65.7±8.3
time receving dialysis(mo) 8.4±6.9 8.2±6.9
SBP 145±22 146±22
DBP 76±11 76±11
BMI 27.5±5.0 27.6±4.6
LDL-C 127±30 125±29
Myocardial infraction(%) 17.3 17.9
Stroke or TIA 18.2 17.4

2005 Jul 21;353(3):238-48.より引用

 

 【結果】

Endpoint Placebo Atorvastatin RR (95%CI)
Primary 243(38) 226(37) 0.92 0.77-1.10
death from cardiac causes 149(23) 121(20) 0.81 0.64-1.03
Nonfatal myocardial infarction 79(12) 70(11) 0.88 0.64-1.21
Fatal stroke 13(2) 27(4) 2.03 1.05-3.93
Nonfatal stroke 32(5) 33(5) 1.04 0.64-1.69
All cardiac events combined 246(39) 205(33) 0.82 0.68-0.99
Death from all causes 320(50) 297(48) 0.93 0.79-1.08

2005 Jul 21;353(3):238-48.より引用

 

【まとめ・感想】

HDをしているDM患者へのスタチンは心血管イベントを減らすことができないという結果。心臓死は減る傾向があるようにも見えるが、致死的脳卒中は有意に増えている。

実臨床でもHD患者へスタチンが開始されることはあるが、処方意図は確認したほうがよいかと思われる。

SHARP、AURORAも記事にできれば。

 

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