病院薬剤師pharma.ponの備忘録

とある総合病院で働く薬剤師が備忘録としていろんなことを記録していきます。

末梢動脈疾患(PAD)治療後の抗血栓薬はどの薬剤、期間が適正ですか?

【背景】

末梢動脈疾患治療後(ステント留置後)の抗血栓薬については薬剤、期間共にまだコンセンサスが得られていなかった気がする。

過去に調べたことがあるがもう一度新しいデータが出ていないか調べてみる。

※以下過去記事

https://blog.hatena.ne.jp/pharmapon/pharmapon.hatenablog.com/edit?entry=10257846132608176576

 

【参考文献】

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31734299

アブストのみ PADに対する血行再建後の抗血小板薬

DAPT6か月以上とSAPT or DAPT6か月以上とDAPT6か月未満を比べると

DAPT6か月以上が四肢イベントや心血管イベントが少ないという結果。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30799766

アブストのみ 安定したPADに対する抗血栓

症候性PADではアスピリンよりチエノピリジンのがよいかも。

DAPTのが出血は増えるけど心血管イベントや四肢イベントは減る可能性。

SAPT+VKAは出血だけ増やす。

ASA+リバーロキサバン2.5㎎BIDはよいかも。

患者背景が結構違うから何がベストかわからない。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30045826

アブストのみ PAD患者におけるDAPT vs SAPTのメタ解析

DAPTのが死亡率低い(RR:0.89 0.86-0.92 P<0.001)

DAPTのが血行再建再発が少ない(RR:0.80 0.69-0.92 P=0.002)

DAPTのが出血は多い傾向(RR:1.21 0.87-1.68 P=0.26)

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29904448

PADを合併したAMI患者のPCI後のDAPT期間

12か月以上のDAPTを支持する結果ではない。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29062225

 ステント留置後4-6週間DAPTと8-12週間DAPTの比較

開存率、大出血共に差がない。

 

 

と、いろいろ調べていたら

2019年のESVM(European Society for Vascular Medicine)からのガイドラインを発見。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31789115

 

よくまとまっています。

8章以降が目的とする内容でした。

 

・ステント留置かバイパス術か

・ステントを置いた場所

・バイパスの場所

・人工血管かどうか   などなどでいろいろ変わってくるようです。

ただ、まだまだ不明なことが多いようですね。。

 

 

 

【RCT】SGLT2阻害薬の心不全に対する効果はどうですか?【DAPA-HF】

参考文献:Dapagliflozin in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction.

PMID:31535829

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P:18歳以上、EF40%以下でNYHA2-4の心不全患者

  基本的にはRAAS阻害薬やβ遮断薬、MRAの標準治療に上乗せ

I:ダパグリフロジン10㎎/日

C:プラセボ

O:心不全の悪化、心血管死の複合

 

※除外基準:eGFR30ml/min/1.73m2以下、T1DM、低血圧、副作用に忍容性のない患者

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →されている   

・解析方法は              →ITT

・追跡率               →約89%

・追跡期間                →約18.2か月(中央値)

・サンプルサイズ          →約4500人

・スポンサー                →アストラゼネカ

 

 

【患者背景】

 

  ダパグリフロジン(n=2373) プラセボ(n=2371)
年齢 66.2±11.0 66.5±10.8
女性 564(23.8) 545(23.0)
BMI 28.2±6.0 28.1±5.9
アジア人 552(23.3) 564(23.8)
HR 71.5±11.6 71.5±11.8
収縮期血圧 122.0±16.3 121.6±16.3
EF 31.2±6.7 30.9±6.9
既往    
心不全による入院 1124(47.4) 1127(47.5)
心房細動 916(38.6) 902(38.0)
DM 993(41.8) 990(41.8
eGFR (ml/min/1.73m2) 66.0±19.6 65.5±19.3
心不全治療薬    
利尿薬 2216(93.4) 2217(93.5)
ACEI 1332(56.1) 1329(56.1)
ARB 675(28.4) 632(26.7)
ARNI 250(10.5) 258(10.9)
β遮断薬 2278(96.0) 2280(96.2)
MRA 1696(71.5) 1674(70.6)
ジギタリス 445(18.8) 442(18.6)
DM薬    
BG 504/993(50.8) 512/990(51.7)
SU 228/993(23.0) 210/990(21.2)
DPP4I 161/993(16.2) 149/990(15.1)
GRP1作動薬 11/993(1.1) 10/990(1.0)
インスリン 274/993(27.6) 266/990(26.9)

  2019 Nov 21;381(21):1995-2008.より

 

【結果】

  ダパグリフロジン
(n=2373)
プラセボ
(n=2371)
HR P-value
複合主要評価項目 386(16.3) 502(21.2) 0.74(0.65-0.85) <0.001
心不全による入院
緊急受診
237(10.0) 326(13.7) 0.70(0.59-0.83) NA
心不全による入院 231(9.7) 318(13.4) 0.70(0.59-0.83) NA
心血管死 227(9.6) 273(11.5) 0.82(0.69-0.98) NA
全死亡 276(11.6) 329(13.9) 0.83(0.71-0.97) NA

2019 Nov 21;381(21):1995-2008.より

ほかの細かい結果はTable2を参照

サブ解析はFigure3

安全性はおおむねプラセボと差がない。

 

 

【まとめ・感想】

ソフトエンドポイントもあるが二重盲検であるのでそこまで気にしなくてもよさそう。

複合アウトカムについて有意な差があり、今後も使用量が増えていきそう。

ただ、サブ解析をみるとNYHAが3-4では効果が乏しくNYHA2だと効果が大きい。また、NT-proBNPも中央値より低いほうが効果が大きいのでわりと軽症例のがよいのかもしれない。EFも低いほうが効果がありそうで、HFpEFも含んだDLIVER試験やDETERMINE試験の効果がどうなるかは気になるところ。

個人的には「利尿作用がある血糖降下薬」というよりも「血糖降下作用がある利尿薬」というイメージ。(だからなに?)

忘れずにいたいのはあくまでも標準治療への上乗せであること。

Table2をみるとHbA1cの低下は-0.21で思ったより下がらないイメージ。DMではない人も含んでいるからか。

下肢切断はやっぱりプラセボに比べて多くないものの、追跡期間はそれほど長くない。

CANVASは約300週、CANVAS-Rでは約110週の追跡で、骨折もたしかCANVASで多いから使用期間が長期になればなるほど上記のような有害事象が増える可能性はあるのかもしれないと個人的に思っている。ただCANVASは300㎎使ってる人もいたような・・。

やはり患者群をみると体格は大柄な人たちがメイン。カリカリの高齢者の方に使用するのは少し気になってしまう・・・。

 

 
 

【RCT】AfとCAD合併でPCI or CABG後1年たったらDOAC単剤でよいですか?【AFIRE】

 AFIREがpublishされたので読んでみる。

参考文献:Antithrombotic Therapy for Atrial Fibrillation with Stable Coronary Disease

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1904143?query=recirc_curatedRelated_article

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P:1年以上前にPCI or CABGを施行、もしくはCAGで血行再建不要のCAD(50%以上の狭窄)を有する20歳以上のAf患者2236人

 I:リバーロキサバン単剤

C:リバーロキサバン+抗血小板薬1剤(ASA or P2Y12i)

O脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建が必要な不安定狭心症、全死亡の複合

大出血

 

有効性は非劣勢検討で非劣勢マージン1.46

安全性(大出血)は優越性検討

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されていそう

・盲検化されているか         →オープンラベル  

・解析方法は              →有効性 mITT 

                   安全性 PPS

・追跡率               →約86-90%

・追跡期間                →約24.1か月(中央値)

・患者背景             →下記参照

・サンプルサイズ          →約2200人

・スポンサー               →バイエル 

 

 

 

【患者背景】

患者 Rivaroxaban Monotherapy Combination Therapy
年齢 74.3±8.3 74.4±8.2
75歳以下 47.40% 47.60%
男性 79% 79.10%
BMI 24.5±3.7 24.5±3.7
DM 41.60% 42.10%
MI既往 34.70% 35.50%
PCI 70.60% 70.70%
DES 69.20% 66.20%
BMS 23.70% 23.70%
両方 2.60% 5.00%
CABG歴 11.30% 11.50%
Paroxysmal 53.80% 52.30%
Persistent 14.80% 15.80%
Permanent 31.30% 31.90%
CCr 62.8±25.7 61.7±24.0
<30ml/min 5.10% 5.80%
30-50ml/min 28.50% 28.20%
≧50ml/min 66.40% 66.00%

TableS2 TableS3にさらに詳しくのってる。

 

【結果】

ENDpoint Rivaroxaban
Monotherapy
Combination
Therapy
HR P-value
Primary 4.14% 5.75% 0.72(0.55-0.95) <0.001
虚血性脳卒中 0.96% 1.31% 0.73(0.42-1.29)  
出血性脳卒中 0.18% 0.60% 0.30(0.10-0.92)  
心筋梗塞 0.59% 0.37% 1.60(0.67-3.87)  
不安定狭心症 0.59% 0.84% 0.71(0.35-1.44)  
全身性塞栓症 0.09% 0.05% 1.97(0.18-21.73)  
全死亡 1.85% 3.37% 0.55(0.38-0.81)  
心血管死 1.17% 1.99% 0.59(0.36-0.96)  
非心血管死 0.68% 1.39% 0.49(0.27-0.92)  
大出血 1.62% 2.76% 0.59(0.39-0.89) 0.01

 TableS4以降にも詳しくのってる。

 

【まとめ・感想】

PCIやCABG後1年たったらOAC単剤を推奨するような結果。

DAPT期間は短く、抗血栓薬の併用は少なく。といった流れを後押しする感じ。日本人対象で、日本のイグザレルト用量での結果はとても参考になる。

今後はむしろどのような症例で併用を検討すべきか。といった視点に変わっていくのかもしれないなーと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【RCT】高齢者に対する一次予防としてのエゼチミブの効果はどうですか?【EWTOPIA75】

EWTOPIA75の結果がpublishされたので読んでみる。

 

参考文献:Ezetimibe Lipid-Lowering Trial on Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Disease in 75 or Older (EWTOPIA 75): A Randomized Controlled Trial.

PMID:31434507

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験)

論文の内容

P:75歳以上でLDL-C≧140mg/dlで下記※のうち1つ以上満たす患者

I:エゼチミブ10㎎/d+食事療法

C:食事療法

O:心臓突然死、心筋梗塞、血行再建術(PCIorCABG)、脳卒中の複合

 

※高血圧、糖尿病、低HDL-C、高TG、喫煙、脳梗塞の既往、PAD

 

除外基準:空腹時TG400 mg/dL以上、心筋梗塞の既往、冠血行再建術(PCIorCABG)の既往、治療を必要とする狭心症脳卒中発症後6ヶ月未満、重度の肝障害、重度の腎障害、悪性腫瘍、認知症、FH、Af、過敏症、他の治験に参加中

 

副次評価項目 各種心血管イベント、各種脳血管イベント、死亡、入院、悪性腫瘍、認知症発症、大腿骨頸部骨折、ADL、施設入所、経済効果

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカムといえる

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →PROBE法     

・解析方法は              →ITT PPS

・追跡率               →両群約90%

・追跡期間                →4.1年

・患者背景             →下記を参照

・サンプルサイズ          →6000例   

・スポンサー                →バイエル、MSD、老年医学会、心臓財団、アテローム動脈硬化学会

 

【患者背景】

 

ezetimibe(n=1716)

control(n=1695)

age

80.6±4.7

80.6±4.7

male

440(25.6%)

432(19.2%)

BMI

23.6±3.5

23.5±3.7

LDL(mg/dl)

161.9±20.1

161.3±19.4

SBP(mmHg)

137.0±15.8

135.8±15.9

DM

433(25.2%)

434(25.6%)

  2019 Aug 22.より

 

【結果】

  Ezetimibe Control HR 95%CI P-value
複合脳心血管イベント
(Primary)
89(5.2) 133(7.8) 0.66 0.50-0.86 0.002
複合心イベント 26(1.5) 43(2.5) 0.6 0.37-0.98 0.039
全死亡 188(11.0) 173(10.2) 1.09 0.89-1.34 0.43
脳卒中 47(2.7) 60(3.5) 0.78 0.53-1.14 0.2
冠動脈血行再建 10(0.6) 26(1.5) 0.38 0.18-0.79 0.007

  2019 Aug 22.より

 

【まとめ・感想】

症例数が足りていないものの、Primary endpointは有意に減少という結果。

ただ、プラセボ投与はなく、PROBE法であり血行再建術が大きく減少していることは割り引いて考えたほうがよさそう。

今回の試験は1次予防の効果を見ており、2次予防に対するエゼチミブ単独の効果は不明。今度ジェネリックが出るらしいが薬価は圧倒的にスタチンのが安いので1次予防に使用するにしてもスタチンが先に来る気がする。

個人的にはあんまりポジティブな結果には思えない。

 

【RCT】デュロキセチンの有効性・安全性はどうですか?【院内抄読会】

【仮想症例シナリオ】

あなたはとある病院の薬剤師さんです。

梅雨も明け、夏の暑さがいっそう激しくなってきました。

 

ある平日の午後、窓口で薬を説明しているとあなたは患者さんから質問を受けました。

 

患者「すいません。少し教えてほしいんですけど・・・・このサインバルタっていう薬を整形外科で膝とか腰の痛みに対してもらっているんですけど、これって元々はうつ病とかの薬ですよね?」

「この薬を飲み始めてやっぱり精神的に何か不安定になることが多い気がして・・・・膝の痛みもあまり良くなった気がしないんです。」

うつ病の薬が痛みに効くってのがあんまりしっくり来なくて・・・効いてくるまでに時間がかかったりするんですか?」

 

痛みに対してトリプタノールサインバルタなどが使用されることは知っていたあなたでしたが、具体的にどれほどの効果が期待できるのかはよく知りませんでした。

次回受診までにしっかりデータを調べておくことを患者さんにお伝えし、業後論文を探してみるとRCTを見つけることができたため読んでみることにしました。

 

 

参考文献:Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Phase III Trial of Duloxetine Monotherapy in Japanese Patients With Chronic Low Back Pain.

PMID 27831985

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27831985

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【患者背景】

62歳 女性 160㎝ 63㎏

既往歴:腰痛 高血圧

検査値:

内服薬:

アムロジピン5㎎     1T/朝

・セレコックス100㎎    4T/2x

ムコスタ100㎎      3T/3x

・ワントラム100㎎     1T/朝

・トラマール25㎎      1T/とんぷく

・ロキソプロフェンテープ

・スミルスチック

 

【X-5day~下記開始】

サインバルタ20㎎     1T/寝る前

 

アドヒアランス: よい

生活習慣:最近夫が定年で仕事を退職し毎日家にいるためストレス

 

 

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P:NSAID無効のBPI4以上の腰痛が6か月以上持続した20-80歳の外来患者

I:デュロキセチン20㎎を1週間→40㎎1週間→60mg

C:プラセボ

O:14週目までのBPIスコアの変化

 

副次的評価項目:BPI疼痛、患者改善の印象、重症度の印象、ローランドモリスのアンケート、安全性と忍容性

 

NSAID、筋弛緩薬、抗うつ薬、BZDなどの併用は禁止(appendix1)

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か      →明確である

・真のアウトカムかどうか      →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか   →されている

・盲検化されているか         →されている   

・解析方法は              →FAS

・追跡率               →90.1%   88.5%

・追跡期間                →14週

・サンプルサイズ          →約450人

・スポンサー                →塩野義 リリー

 

Exclucion

・腰部手術の既往

・1か月前に腰痛緩和のための侵襲的治療を受けたもの

・松葉づえや歩行器を必要とする人

・大うつ病性障害、C-SSRSで自殺傾向があると診断されたもの

  

 

【患者背景】

 f:id:pharmapon:20190819182850p:plain

2016 Nov 15;41(22):1709-1717.より引用 

 

【結果】

     平均疼痛スコアの変化             応答率

f:id:pharmapon:20190819182835p:plain

  2016 Nov 15;41(22):1709-1717.より引用 

 

【有害事象】f:id:pharmapon:20190819182911p:plain

f:id:pharmapon:20190819182940p:plain

  2016 Nov 15;41(22):1709-1717.より引用 

 

【みんなの感想】

比較的投与初期からプラセボと比べ有効であることが示唆されるものの差は11段階中で見れば小さい。エビデンスがあるのは最低でも40㎎~となるが、アウトカムが「痛み」という主観的なものであるとすれば20㎎でも本人が効いていると感じていれば20㎎での維持もありなのかもしれない。

投与初期に副作用を感じやすいことがFigure5から見て取れるため投与初期には注意が必要。

追跡率は比較的高いもののITT解析をすると少し差が小さくなる可能性あり。

うつ素因があるような患者は対象から除外されており、精神的疾患の問題がありそうな患者に使用する際は注意が必要なのかもしれない。

また、あくまでサインバルタ単独での有効性を評価しているため、症例のようにNSAIDやトラマールを使用している患者への上乗せ効果はこの文献からは不明。

トラマールに関してはセロトニン作用の重複なども考えられるため併用開始初期は特に注意が必要なのかもしれない。

【メタ解析】急性心不全に対するトルバプタンの効果はどうですか?

最近心不全入院患者では半分以上の患者でサムスカ内服してる印象。

いちどメタ解析を確認しておく。

 

参考文献:Effects of Tolvaptan in patients with acute heart failure: a systematic review and meta-analysis

PMID: 28633650

 

研究デザイン:メタ解析

 

論文の内容

P:成人の【急性】心不全患者

I:トルバプタンの使用

C:プラセボor他の利尿薬(カルペリチド、フロセミド、従来治療)

O: 全死亡、Na値、体重減少、臨床事象、呼吸困難の改善など

 

・Primary Outcomeは明確になっているか     →  明確である

・真のアウトカムかどうか              →  真のアウトカムといえる

                        (一部代用のアウトカムあり)

 

【メタ解析における4つのバイアス】

1.評価者バイアス

Two authors (Wang Chunbin and Xiong Bo) scanned the titles and abstracts of all retrieved articles independently, and irrelevant studies were excluded at this stage. The eligibility of the remaining articles was further evaluated for disagreement or uncertainty. Disagreements were resolved by discussion or consensus of a third reviewer.

→2人のレビュアーで評価。意見の相違は3人目のレビュアー。

 

2.出版バイアス

We searched the databases of PubMed, EMBASE, and the Cochrane Controlled Trial registry from their starting dates to October 24, 2016

published in English

PubMed、EMBASE、Cochraneから。2016.10.24まで。英語のみ

ファンネルプロット使用

 

3.元論文バイアス

RCTのみ。

 

4.異質性バイアス(I2)

→結果を参照

 

【結果】

全死亡

 figure3

  

入院

 figure4

 

心不全の悪化

figure5

 

腎機能の悪化

figure6

 

 呼吸困難感

figure7

 

 体重

figure8

 

 Na値

figure9

 

 【まとめ・感想】

急性心不全に対してトルバプタンでハードアウトカムの改善は見込めなさそう。

ただ比較的小規模な試験ばかりではある。

フロセミドに比べて腎保護的には働く印象あり。

カルペリチドと比較するなら点滴を抜けることによってせん妄の抑制や早期にリハビリなど開始できる可能性はあるが薬価に見合うほどの効果が望めるかは不明。

ただ、実際にはかなりの患者に使用されてる。

現場でかなり使用してる→いい治療法だ。と盲目的に思い込むことはないようにしたいところ。

次は慢性心不全などへの効果(PMID:29602756)を見てみたいところ。

 

 

 

【RCT】エゼチミブの効果はどうですか?【IMPROVE-IT】

今更感がすごいけどしっかり読んだことがなかったのでIMPROVE-ITを読んでみる。

 

PMID 26039521 

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1410489?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub%3Dwww.ncbi.nlm.nih.gov

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研究デザイン:RCT(ランダム化比較試験) 

論文の内容

P:50歳以上でACS(ST上昇、非ST上昇の心筋梗塞、高リスク不安定狭心症)による入院後10日以内の患者。

発症後24時間以内のLDL-Cが非治療の患者では50-125mg/dL、長期治療下の患者では50-100mg/dL

 

I:シンバスタチン40㎎ + エゼチミブ10㎎

C:シンバスタチン40㎎

O: 心血管死、心筋梗塞、再入院が必要なUAP、冠動脈血行再建術(無作為化後30日以上)、脳卒中の複合アウトカム

 

副次的評価項目: 全死亡、冠動脈イベント、脳卒中

 

除外基準:CABG予定、CCrが30mL/min以下、活動性肝疾患、強力なスタチンの使用、シクロスポリンやジルチアゼム、フィブラート、アミオダロンなどの使用、重症心不全、肺水腫など

 

【確認ポイント】

・Primary Outcomeは明確か     →明確である

・真のアウトカムかどうか     →真のアウトカム

・適切なランダム化がされているか  →されている(ACS標準治療後にランダム化)

・盲検化されているか        →されている   

・解析方法は             →ITT

・追跡率              →約91%

・追跡期間               →約6年(中央値)

・サンプルサイズ        →不明(イベント数は検出力90%で5250例必要という意味?)

 

【患者背景】

  シンバスタチン単独 シンバスタチン+ゼチーア
年齢 63.6±9.8 63.6±9.7
男性(%) 75.9% 75.5%
体重 kg 83.0±17.4 82.9±17.4
糖尿病 27.3% 27.1%
高血圧 61.3% 61.6%
心不全 4.1% 4.6%
喫煙者 33.5% 32.5%
MI既往 20.7% 21.3%
PCI既往 19.8% 19.5%
CABG既往 9.3% 9.3%

 

【結果】

  シンバスタチン単独 シンバスタチン+ゼチーア HR(95%CI) P-Value
primary endpoint 34.7% 32.7% 0.936(0.89-0.99) 0.016

 

【副作用】

おおきく差はなし。

 

【感想・まとめ】

 primary endpointぎりぎり有意差あるものの効果としてはかなり微妙な印象。症例数がかなり多いので有意差が出た部分もある?

NNT=50で、エゼチミブの薬価が177円なので365*177*6*50=約2000万円かけて1件のイベントが減ると考えると・・・・。

アジア人の割合は5%程度であり、日本人に対しての効果はもう少し低いものになる可能性がある。EWTOPIA試験の結果を早く読みたいところ。

REAL-CAD(PMID:29735587)をみても日本人での心血管イベント数はかなり少ない印象。

個人的には脂質コントロール強化する場合はスタチン→スタチン増量→エゼチミブ追加の流れで治療していくのがよいのかなぁと思ったり。

ガイドラインでは2次予防でLDL70以下を目標に設定されているけれど、本当にそこまで全例下げる必要があるのか疑問。

いろんなデータを見れば見るほどわからないことが増えていく・・・。